社食堂には、飲食事業による実利益以上の効果があると吉田氏は話す。
「建築設計事務所によるアピールの場として機能しています。私たちがただ、各機能が同一空間上にあるオープンなオフィスを提案しても、そうした前例がない珍しいものはなかなか誰もやりたがらないものです。特にキッチン併設の場合は、においや音などを心配する意見もよく聞きます。
しかし、実際に機能しているところを見せることで、社食堂がプレゼンテーションの場となるのです。社食堂を見学した企業から当社にオフィス設計の依頼があったケースは、これまでに数多くあります」(同)
今後東京オフィスは移転する予定だが、移転先でも社食堂を設ける予定だ。その際は同社が広島で運営するクラフトアイスクリームショップ「yacone」も併設するという。同社は他にも文房具やハンドクリームを販売するコーヒースタンド「BIRD BATH&KIOSK」などを運営しており、相乗効果も期待できそうだ。
社食堂は今後、どう展開していくのだろうか。
「社食堂の店舗数を増やすことは考えていませんが、設計を通じて同様の空間が増えれば良いなと考えています。昔は別物として分けられていた生活と仕事ですが、働き方の中に食の場がある、そうしたスタイルを普及させたいです」(同)
1つの場所にオフィス・カフェレストラン・福利厚生・モデルルームと4つの機能を持たせ、限られた空間を最大限に活用する取り組みの社食堂。企業には平日の昼間しか利用者がいない食堂、誰も利用していない社内図書館など"遊休空間"が多い。コロナ禍で変化し始めたオフィスの在り方として、大いに参考となる事例だろう。
山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_
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