こうしたマンガ制作における時間との向き合い方を知る組織のあり方として、いくつかの要素があります。
まず、集英社、講談社、小学館、白泉社、秋田書店など、老舗のマンガ出版社の多くは上場していません。これは、編集部組織の形成にあたっては非常に大きい要素と、私は考えるにいたりました。
この点については、各社の財務体質、オーナー企業やそのグループ企業であることなど、たくさんの要素があります。
ただ、その中でも、マンガ出版事業を知らない株主からものを言われない組織であることが大きいと思われるのです。再現性のない、およそ現在の経営的観点からは遠い深淵なる「漫画家と編集者の関係性」との向き合い方や、長い時間をかけて、ゴリゴリの経済合理性とは離れた、じっくりとした組織マネジメントを行っていけるのは、非上場企業であるからできる、世間と経営の隔絶が大きな防壁となっているのです。
そうした環境下で大事な要素は、編集部組織の要職を占める人材が、部課長級から事業部責任者の取締役まで、漫画のつくり方に精通し、漫画家との向き合い方という意味で、百戦錬磨で十分に経験を積んでいる組織から、大ヒット作が産まれていることです。
そうした人事が編集部組織を支えており、長期的判断を是とする非上場企業の強い点です。もちろん、それ以外のかたちで組織ができることは考えられますし、そうした挑戦は尊いと思いますが、少なくとも現在までの大ヒット作品の苗床はそうなっています。
ここまで長々と述べてきましたが、なにせマンガづくりというものは、工業製品のように製作工程に再現性のある、大量生産が効くものではありません。一つひとつの作品づくりに、漫画家のえずくような苦労の連続があり、それを最大限支えようとする編集部のあり方があります。
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