海外と比べて、日本のビッグマックは「割安」 それって“悪い”ことなのか『ビッグマックと弱い円ができるまで』(2/2 ページ)

» 2024年10月30日 09時00分 公開
[佐々木融ITmedia]
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ビッグマックと弱い円ができるまで』(著・佐々木融/クロスメディア・パブリッシング)

 モノやサービスの「価格(値段)」が上昇するということは、お金の『価値』が下落していることを意味する。逆にモノやサービスの「価格」が下落するということは、お金の『価値』が上昇している。

 だから、米国でビッグマックの米ドル建ての価格が日本よりも大きく上昇しているということは、それぞれの国で別々に考えると、ビッグマックに対して円よりも米ドルの価値の方がより大きく下落していることを意味している。だから、普通に考えれば米ドルに対して円の価値が上昇しているはずなのに、実際には米ドルに対して円は下落して、大幅に円安が進んでいる。

 その結果、円で海外のビッグマックを買う時により多くの円を必要とするようになっている。つまり、海外のビッグマックに対する円の価値が大幅に下がっているということになる。

 日本国内で閉じた世界では、円の価値はさほど下がっていないのに、国際的に見ると、円の価値が大幅に下がっているということになる。そして、それは円でお給料をもらっているわれわれの労働の価値が世界の中で低く評価されていることも意味する。

【まとめ】

世界の中で、円の価値は大幅に低く評価されている。

著者プロフィール:佐々木 融(ささき・とおる)

ふくおかフィナンシャルグループ・チーフストラテジスト

 1992年上智大学外国語学部英語学科卒業後、日本銀行入行。調査統計局、札幌支店を経て1994年から1997年まで国際局(当時)為替課に配属。市場調査・分析の他、為替市場介入も担当。その後考査局を経て、2000年7月よりニューヨーク事務所に配属され、NY連邦準備銀行等、米国当局と情報交換を行いつつ、外国為替市場を含めたNY市場全般の情報収集・調査・分析を担当。

 2003年4月、JPモルガン・チェース銀行にチーフFXストラテジストとして入行。2009年6月債券為替調査部長、2010年5月マネジング・ディレクター、2015年6月市場調査本部長。20年以上にわたってJPモルガンの世界全体のオフィシャルな円相場予想作成の責任者を務める。2023年12月より現職。

 日経ヴェリタス為替アナリストランキング、2016年及び2018年〜2021年まで4年連続1位。インスティテューショナル・インベスターズ誌日本為替アナリストランキング、2019年、2020年1位。2024年3月、財務省「国際収支に関する懇談会」委員。著書に『弱い日本の強い円』(日本経済新聞社、2011年)『インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?』(ダイヤモンド社、2013)がある。


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