では、一方の反対派はどのような主張をしているのか。「富士山登山鉄道構想に反対するフォーラム」に登壇した元・都留文科大学教授の渡辺豊博氏は、「富士山はユネスコからさまざまな問題点・改善点の指摘を受けているが、登山鉄道を建設すれば、それらの問題が解決するかのような県の主張は誤っている」と声を張り上げる。
渡辺氏は「富士山の最大の問題点は管理が一元化されていないことだ。文化庁、環境省、林野庁などによる縦割り行政がそのまま適用されていることが、さまざまな問題を引き起こしている要因」と指摘。環境保護局が一元管理する海外の事例を挙げつつ「富士山を開発すること自体には反対しない。しかし、開発の前提として包括的な管理基本計画(富士山再生アクションプランのようなもの)が必要であり、大きな視野でどのように整備すべきかを検討する必要がある。それがないから県が暴走する」と、一元管理ができていない国の対応のまずさと県の姿勢を批判する。
富士吉田市では、現在、自動運転EVバスの実証実験を進めているが、これを前提に渡辺氏は「オーバーツーリズム対策ということであれば、海外の国立公園と同様、麓にゲートを設けて入山者の総量規制をすればよく、ゲートを通過した人たちはEVバスに乗って五合目へ移動してもらえばいい。登山鉄道など全く必要ない。むしろ、オーバーツーリズムの対策として重要なのは、お客さんを五合目に集中させるのではなく、さまざまな散策コースを設定するなどして分散させ、自然への負荷を軽減する視点だ」と言う。
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