例えば、東大、京大などの高学歴講師ばかりをそろえた学習塾を想像していただきたい。「うちの講師の学力は日本一!」と高らかにうたい、講師たちの学力にさらに磨きをかける。この学習塾に自分の子どもを通わせたい、という親はどのくらいいるだろうか。
「なんか違うんだよなあ」と感じる人も多いはずだ。大切なのは子どもたちの学力向上や合格なのであって、講師の学力はあくまでそれを実現する「手段」に過ぎない。「客」の立場からすれば、志望校に合格させてくれるのなら、講師の学歴・学力などどうでもいい。企業の「技術力」も基本的に同じだ。
粗悪品があふれる途上国では「技術のホニャララ」というようなスローガンは消費者に刺さるだろう。しかし、自動車もEVも世界中で技術のコモディティ化が進んでいる中で、独自技術に過剰にこだわるのは自分の首を絞めかねない。「われわれは常にこうでなくてはいけない」と自縄自縛(じじょうじばく)のわなに陥って、世間ズレしてしまうだけだ。
「技術の日産」なんて自画自賛的なスローガンはいい加減そろそろ取り下げて、米国や中国の人々が本当にどんな車を望んでいるのかということに真摯(しんし)に耳を傾けるべきではないか。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル』
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受
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