注文した商品をロボットが自宅前まで届けてくれる――。牛丼チェーンの吉野家とフードデリバリー大手の出前館は、神奈川県藤沢市で自動搬送ロボットによるデリバリーサービスの実証実験を始めた。
ロボットはパナソニックホールディングス(HD)が開発した「ハコボ」を活用。遠隔オペレーターが車体に搭載されたカメラを通じて、走行を監視する。実証を通じて、顧客体験価値を検証するとともに、人手不足の解消や、新たな雇用創出などの可能性を探る。
今回の実証実験は、パナソニック工場跡地に造成された街区「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン」(藤沢SST)で実施。出前館のアプリで吉野家湘南新道辻堂店の対象メニューが注文されると、同店舗で店員がロボットに商品を積み込む。ロボットは店舗を出発し、藤沢SST内を自動走行し、住宅前まで商品を届ける――という流れだ。
走行中は、藤沢SST内に設置された遠隔監視センターから、オペレーターらがロボットの走行を監視・操作する。
実証の背景にあるのが、配達員の担い手不足と雇用創出の課題だ。コロナ禍を経てライフスタイルが変化する中で、飲食業界ではテイクアウトやフードデリバリーサービスが拡大。一方で担い手が不足し、販売機会の損失が課題となっている。
吉野家と出前館は2021年に横須賀市立市民病院の医療従事者に、出前館のアプリで注文された吉野家の牛丼弁当をドローンで配送する実証実験を実施。ほかにも、山間部や市街地、住宅地などさまざまな環境パターンに応じた最適な自動搬送を検討してきた。
吉野家未来創造研究所の古田勝己部長は、今回の実証について「当社としては実店舗に実際の顧客からオーダーを受けてロボット配送するのはこれが初めて。料理を運ぶという行為に、新たな付加価値を生み出せるのではないか」と期待を込める。
出前館戦略開発グループの松村育俊氏も「地域の人々の幸せをつなぐライフラインをビジョンに掲げ、食料品アクセスなどの社会課題解決に寄与していきたい」と話した。
パナソニックHDも、2022年に楽天や西友と連携し、茨城県つくば市で自動配送ロボットサービスを展開するなど、実用化に向けた取り組みを進めてきた。雇用創出を目指し、ロボットを遠隔から監視・操作するオペレーターの養成も重視し、これまでに20〜60代の20人以上のオペレーターを養成してきたという。
パナソニックHDモビリティ事業戦略室の東島勝義部長は「特に配達員不足の傾向がある地方、郊外でロボットデリバリーによる課題解決に貢献するとともに、遠隔オペレーターといった新たな働き方も創出していきたい」と話した。
ロボット配送を巡っては、2023年4月に改正道路交通法が施行。一定の要件を満たしたロボットは、届出制により公道を走行できるようになった。こうしたルール整備の進展も、事業者側にとって追い風となっている。
実証実験は11月21日まで。実証終了後は利用者アンケートなどを実施し、ロボット配送の本格稼働に向けて検証作業を進めるという。
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