10月から新たに開始した通年採用では、応募資格を「大学1〜2年生」にも広げた。こちらについても、学生が自分のタイミングで、選考に参加できるようにすることが目的だという。
とはいえ、制度導入の大きなきっかけとなったのは「就活の早期化」だ。「特に2024年卒〜2025年卒の採用にかけて、顕著に変化があったと感じています」(採用担当者)
政府が現在、経済団体などに要請している採用活動の日程は「広報活動開始が卒業・修了年度に入る前の3月1日以降、選考活動開始が6月1日以降、正式な内定日が10月1日以降」というもの。しかしこのルールは有名無実化しており、実際には多くの企業が、大学3年生の時点で内定を出す早期選考を実施している。
こうした状況に対し、採用担当者は「丁寧にマッチングをすり合わせるというよりも、『内定を得る』ことがゴールになっている就職活動には、非常に危惧を抱いています」と話す。
「ひとくくりに『学生』と言っても、さまざまなバックグラウンドを持った学生がいます。それならば、選考の形もさまざまな選択肢があってよいのではないかと考え、このようなスタイルを導入することにしました。これまでも、既卒まで対象に含めた通年での採用活動を実施していましたが、大学1〜2年生も対象とすることで『本当の通年採用にしよう』と決めた形です。『青田買い』と仰る方もいますが、そういった捉えられ方は本意ではありません」(採用担当者)
とはいえ、実際に1〜2年生からの応募は見込めるのか。担当者は「やはり主要になるのは3〜4年生の選考」だとしつつも、「中には1〜2年生の段階でしっかりとマッチングできる学生もいると考えています」と話す。
想定しているのは、観光系の学部で学んでいる学生など、1〜2年生の段階ですでに星野リゾートでのキャリアに関心を寄せている学生。「積極的にアプローチしていく予定はない」というものの、同社の採用サイトからは応募を受け付けており、早くも応募者は現れている。選考に関心を持つ学生に対しては、エントリーの前後どちらでも参加可能なセミナーやインターンシップも通年で用意し、継続的に企業と接触する機会を提供するという。
また、早めに星野リゾートで内定を獲得しておいて、「本命」の企業に合格したら辞退する――そんな学生が現れるリスクについても気になるところ。担当者は「そういった想定の方には内定をお出ししない、といった見極めはしていきたい」と話す。
「中には『とにかく早めに内定が欲しい』という1〜2年生の方もいますが、私たちの狙いとは異なるので、面接を通してしっかりお話しています」(採用担当者)
インバウンド需要が急速に回復するなど、業界全体で人手不足が顕在化するなか、新卒・中途共に採用数を増やしているという星野リゾート。同社における採用フローの多様化は、労使ともに望ましいマッチングにつながるか。
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