オンラインショッピングの台頭により実店舗の閉鎖が相次いだことで、ショッピングモールやいわゆる「ハイストリート」(目抜き通り) の将来性が危惧されてきた。ところが、このところの欧州では実店舗が復活の兆しを見せ、ネット販売を促進する上でも重要な存在になっている。
欧州の小売各社は、オンライン、実店舗双方の売り上げを刺激するため、実店舗への投資を進めている。背景には、中国発の「SHEIN」(シーイン)など巨大オンライン小売企業との競争激化がある。
さらに欧州の小売各社には、コロナ禍によるロックダウンが終わって人々の来店意欲が回復し、土曜午後のショッピングが再び流行している流れに乗りたいという狙いもある。
「店に足を運んだのは、実物を見て試着し、すぐに入手したかったから」と語るのは、ローマのショッピングセンターで品定め中のフランチェスカ・マリーニさん(28)。オンラインショッピングでは商品到着まで待たされ、ショッピングの楽しみが損なわれると話す。
市場調査会社ユーロモニターのデータによると、2023年の欧州内の実店舗総数は、前の年の492万店から490万店に微減となった。ただし同じデータによると、売り場面積は約1%とわずかに増え、2028年には2022年と比較して2.7%増加する見込みだという。
LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)とアディダスの株式を保有するユニオン・インベストメントでポートフォリオマネジャーを務めるトマス・ジョーケル氏によれば、直接触れ合う機会がなければ顧客をつなぎ止めることは困難であることを、小売各社が痛感しているという。
「オンラインショップだけでなく実店舗もあれば、顧客の引き止めが楽になる」とジョーケル氏は言う。「オンラインショップでは写真を見ることはできるが、感触や匂いも分からないし、誰かに相談することもできない。あるブランドに安心感を持ち、夢中になるのはかなり難しくなる」
コロナ禍以降、スポーツ用品業界ではランニングシューズやトレーニング用品の需要が増えている。人々がなるべく屋外での活動を楽しもうとしているからだ。
「アディダスやノースフェイスなどの成功を見れば分かるように、コロナ禍の最中からその兆しはあったが、屋外での活動が増える傾向が確実にあると思う」と、ドイツ銀行でアナリストを務めるアダム・コホラン氏は話す。「人々が外に出て何かやる必要があると気付き、そうした行動の一部がすでに定着したのだと思う」
スポーツ用品小売りの仏デカトロンでグローバル最高顧客担当責任者を務めるセリーヌ・デル・ジーンズ氏によれば、同社は2024年、系列店を約80店舗増やしたという。世界全体での系列店舗数は合計約1700店に達した。
イタリアで約160店舗を展開する小売企業シサルファは、ナイキのサッカーシューズやアンダーアーマーのランニングシャツなどのスポーツ衣料を販売。2024年は自国市場で約10店舗の新規出店・改装を予定している。
同社は先日、ドイツのスポルトシェックを買収し、独国内で展開する店舗数は25店舗増えて75店舗となった。
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