リテール大革命

リアル店舗が復活の兆し? 「実店舗を開けば近隣でオンライン販売が増える」ワケ(2/2 ページ)

» 2024年11月22日 08時00分 公開
[ロイター]
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「実店舗を開けば近隣でオンライン販売が増える」

 ドイツ銀行のコホラン氏が示したデータによれば、実店舗から車で20分以内の範囲では、オンラインでの売り上げが10〜20%増加しているという。複数の購入手段を利用する顧客が増えているからだ。

 コホラン氏は「双方向への好影響を示す決定的な証拠がある。実店舗を開設すれば近隣でのオンライン販売が増えるし、逆に実店舗を閉めた場合は、オンラインであれ別店舗への顧客誘導であれ、閉鎖店舗分の売り上げを完全に回復することはできないというデータがある」と語る。

 登山用品小売のオベラルプで最高営業責任者を務めるステファン・ライナー氏は、「あるエリアの店舗数が多いほど、オンラインのブランドへの注目も高まる」と話す。

 デカトロンでは買い物客を呼び込むため、用具の修理やレンタル専用の拠点と、顧客が実際にスポーツを楽しめるスペースを用意している。デカトロンのデル・ジュネ最高顧客責任者はロイターに対し「実店舗は、ショールームや製品との出会いの場といった新しい機能を提供することで、物理的要素とデジタル要素を統合し、商品を吟味、分析、比較しやすくしている」と語った。

写真はイメージ(ゲッティイメージズ)

 ローマのショッピングモールでは、デカトロンの店舗の入り口付近に卓球台が2台用意されており、無料で遊べるようになっている。プレーしていた若者の1人はロイターに対し「いいアイデアだと思う。ふだんは買い物しかしない場所で遊べるのだから」と語った。その脇ではピンポン玉が飛び交い、友人たちが今のはインだのアウトだのと言い合っている。

 ファッションブランドのザラを傘下に抱えるスペインの小売企業インディテックスは、グループ向け試着室を提供し、友人と一緒に入って服を試着できるようにしている。内部にはタッチパネルが用意され、利用者は別のサイズやスタイルをリクエストできる。

 ドイツのネット小売企業ザランドが国内に15カ所の実店舗を展開済みで、さらにもう1店舗が南部フライブルクで建設中だ。

 ザランドは水着からヒューゴ・ボスのドレスに至るまで多種多様な商品を販売するが、他の小売企業と同じく、シーインとの競争激化に巻き込まれている。

 シンガポールを拠点とするオンライン小売企業シーインは、欧州や英国の都市で、数日間限定で営業する「ポップアップ」店舗戦略を採用している。

 小売産業の専門家によれば、利用客は、実店舗で購入することによる店員との交流や利便性、その場ですぐ手に入るという即時性を好んでいるという。

アナリスト「消費者は実店舗に回帰」

 RBCの複数のアナリストは「消費者はショッピングに、娯楽としての側面があることを思い出し、実店舗への回帰を選んでいる」と語る。さらに、ネットで注文して実店舗で受け取る「クリック・アンド・コレクト」の便利さも好まれている。オフィス勤務が再開しつつあり、配達時に家にいられるとは限らないからだ。

 ユニオン・インベストメントのジョーケル氏は「人によっては、Tシャツを買ってパーティや学校に行きたいだけという場合もある。それだけのために2週間も待つなんて悠長すぎる」と話した。

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