秋だけ別のきっぷが生まれた背景には、青春18きっぷと「秋の乗り放題パス」の生い立ちに違いがあるからだ。青春18きっぷは学生の夏休み、冬休み、春休みを前提に、国鉄時代の増収策として発売された。発売時は「青春18のびのびきっぷ」という名称だった。
「秋の乗り放題パス」のルーツは、1996年から2011年まで販売された「鉄道の日記念・JR全線乗り放題きっぷ」だった。10月14日は日本の鉄道開業日にちなんだ鉄道の日。そこで多くの人々に鉄道の旅に親しんでもらうために設定された。効力は青春18きっぷに似ており、鉄道の日の前後16日間の有効期間内に3回利用できた。料金は9180円で、1回当たりの料金は青春18きっぷより割高だった。しかし、秋も青春18きっぷがほしいという利用者に歓迎された。
「鉄道の日記念・JR全線乗り放題きっぷ」は、2012年から「秋の乗り放題パス」になった。主な変更点は有効期間内の「3回利用」が「連続3日」になった。つまり今回の青春18きっぷと同じ変更だ。当時、今ほど多くの反発があったという記憶はない。むしろ価格が7500円(当時)に値下げされたことを歓迎する声が多かった。その背景として、1989年の祝日法の改正により、祝日が月曜日に移動して3連休が増えたこともありそうだ。
ともあれ、今回の青春18きっぷの変更は、見方を変えれば「秋の乗り放題パス」にならった形である。むしろ「青春18きっぷをとりやめ、冬の乗り放題パスにします。新たに5日間用を追加します」としてくれたほうがスッキリする。ちなみに青春18きっぷの3日間用は1万円だから、現在の「秋の乗り放題パス」の7850円より割高になった。そこも反発の理由になっていると思う。
それでもJRグループは「青春18きっぷ」のブランドを捨てなかった。人気商品のブランドを取りやめると、顧客を一気に失ってしまう。もしかしたら「秋の乗り放題パス」のほうを「秋の青春18きっぷ」にするかもしれない。そして価格も統一するだろう。つまり秋の方を値上げする。収益を考えると、その方向性も見えてくる。
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