青春18きっぷはその名の通り「若い人に鉄道旅を楽しんでもらいたい」が主旨だった。マクドナルドのハッピーセットと同じで、子どもの頃に味を覚えてもらえば、ソウルフードとなって、大人になっても来店してくれる。ただしその時はハッピーセットではなく、ビッグマックやダブルチーズバーガーになり単価が上がる。食べる量も増える。
ところが往年の青春18きっぷユーザーときたら、大人になっても青春18きっぷから離れてくれない。新幹線にも乗ってくれず、LCCで北海道や九州へ飛び、1日か2日分の青春18きっぷを使う。元が取れたら、それ以降は日常の雑用で消費するか、困ったことに金券ショップに売ってしまう。
かといって、青春18きっぷをいまさら「U18限定」にすれば大混乱だ。そこで、本来のターゲット層に絞った使い道「3日連続」「5日連続」に変更したのではないか。
青春18きっぷから締め出された大人たちはどうしたらいいか。実はJRは、大人たちに快適でお得な切符を用意している。「Peach/FDA ひがし北海道フリーパス(2万円)」「四国フリーきっぷ(1万8000円)」「旅名人の九州満喫きっぷ(1万1000円)」など、調べればいくつも出てくる。これらの切符は飛行機で現地に行ってから使う。特急に乗れて、指定席も使えるタイプもあるし、JR周辺の私鉄も組み合わせたタイプもある。
JR各社が自社線内で完結するフリー切符を出している。だからもう青春18きっぷは必要ない、という見立てもできる。しかし青春18きっぷは残った。実情として、シニアが使う青春18きっぷはビジネスのバランスを崩している。いつまでも青春18きっぷに固執しないで、可処分所得と可処分時間に見合った切符に誘導したいというJR側の意図がありそうだ。
そもそも青春18きっぷは「お金はない、時間はたっぷりある」という人向けの切符だ。大人になると「時間が足りない。お金で解決できるなら割高でもいい」となる。青春18きっぷは本来の趣旨、「若い人に鉄道旅を楽しんでもらいたい」に立ち返る。これがJR各社の提案だと思われる。それがうまくいくかどうか、この冬の売れ行きにかかっている。
乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICETHREETREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。
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