ではもう少しこの物流コストの中身を見ていこう。物流コストは(1)「自家物流費」、(2)「物流子会社への支払物流費」、(3)「物流専業者への支払物流費」――に分けることができる。この分け方を支払形態別分類という。要は物流費を支払う対象がどこなのか、という見方である。
(1)の対象は自社である。(2)は物流子会社、(3)は物流専業者――ということになる。(2)と(3)は対外支払費のため把握が容易であるが、(1)はどこまで抽出できるかがポイントになる。なぜなら製造コストに含まれる物流人件費や情報システム費に含まれる物流分などを切り出すことは容易でないからである。参考までにこのコストの大きさを比較すると(1):(2):(3)=10:17:73という比率になっている。
物流コストについて物流機能別に把握するという方法もある。これは物流6機能である輸送、保管、荷役、包装、流通加工、情報――のそれぞれでいくらかかっているかを把握する方法である。
もう一つの切り口は、領域別にコストを把握する方法がある。領域とは(1)「調達物流」、(2)「社内物流」、(3)「販売物流」――の3つの領域のことである(図2)。領域別コストの大きさは(1):(2):(3)=6:18:76となる。
これは日本の商習慣上、売り側が顧客にものを届ける(この行為を「販売物流」という)という特徴を示しているといえよう。つまり、買い側がものを引き取る「調達物流」は一般的にはほとんど行われておらず、その数字が認識されていないため(1)が非常に小さくなっているのである。
物流キーマンの基礎筋力として、最初に次の7領域を鍛えていこう。
(1)「物流サービス」:物流活動を通して生み出す付加価値のことを指す。
(2)「物流システム」:情報システムのことではなく、物流を効率よく動かすためのしくみのことである。
(3)「物流生産性」:工場では当然に行われていることだが物流についても同様に把握管理していくことが必要である。
(4)「在庫」:物流業務の中での重要要素である在庫管理である。
(5)「物流コスト」:物流コストを先に挙げた分類で正確に把握するとともにその削減に努めなければならない。
(6)「安全管理」:いうまでもないが、物流はトラックやフォークリフトなどを使うので、安全上の課題は多い。きっちりと認識しておきたい。
(7)「環境対策」:物流に起因する温室効果ガスや廃棄物を削減する取組である(図3)。
基礎力として7つの領域をしっかりと管理できることが第一歩である。これに応用力が加わることになるがこれは別途解説していきたい。
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