物流業界における「2024年問題」が顕在化している。この問題を克服するためには物流業の生産性向上以外の道はない。ロジスティクス・コンサルタントの仙石惠一が、運送業はもちろん、間接的に物流に携わる読者に向けて基本からノウハウを解説する。
日本の製造業は世界で最強といわれてきた。OECD加盟国における生産性評価での位置づけでは2000年に1位だったポジションを18位まで下げてしまった(2021年)が、いまだ製造業は全産業の中でトップの位置であることは間違いない。
(参考:日本生産性本部「労働生産性の国際比較 2023」)
その背景にはメイドインジャパンという言葉に込められた商品力や品質力、技術力などが際立つ。それに加え「現場力」という他国が持たない大きな武器があることにも注目すべきだ。現場力を活用し、製造現場は常に改善に取り組み、品質力やコスト力をますます磨いている事実がある。
磨きつくされた製造現場では、大きな改善ネタが見つけにくくなってきたが、まだまだ工場には大きな改善ネタが残されている。それは「物流改善」だ。認識はしてはいるけど物流が分かっている人がいなくて……と嘆く管理者の皆さんに「物流キーマン」の鍛え方をお示ししたい。
毎回書いているように、売上高に対する物流コストの比率は容易に把握できる範囲だけでも約5%である。緻密に各費目に埋もれた物流コストを抽出すれば、この比率は8〜9%になると推測される。
このコストの中にはアウトソース先に対する支払いや社内で物流に関わっているスタッフのコストなど全ての物流関連コストが含まれている。この数字は製造業の営業利益率を上回る大きさであることにお気付きになったのではないだろうか。
その通りで、これは見過ごせないレベルの大きさなのだ。1000億円の売り上げ規模の会社であれば、50億円の物流コストが発生している計算になる。もしこの物流コストの20%を改善できたとすると10億円のコスト削減となり、それは原則としてそのまま利益を押し上げることになる。物流コストの大半が経費であるためだ。
もし会社の売上高営業利益率が4%だとすれば、この利益を生み出すためにはさらに250億円(10億円÷4%)の売り上げが必要になる。一定額の利益を生むために「物流改善」と「売上増」とどちらが大変だか考えてみてほしい。筆者であれば、売上増の方が物流改善よりはるかに難しいと答える。つまり私たちの目の前には比較的容易に掘り当てることが可能な大きな宝が潜んでいると考えるべきなのだ。
物流キーマンはこの事実を認識し、実改善を実行することで会社に貢献する責務を負っているのだ。
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