新発想、スティック状の豆腐である豆腐バーをヒットさせたのは、アサヒコという豆腐メーカーだ。
創業して間もない1972年、埼玉県行田市に業界初の「衛生的で均一な品質の豆腐」を量産する工場を新設しており、革新的な気風のある会社。2016年までの社名は朝日食品工業だった。
開発したのは、2023年5月より同社の代表取締役を務める池田未央氏。約20年間にわたり、菓子メーカーを3回転職してヒット商品を手掛け、あらゆる分野、チャネルの商品開発に携わってきた。正直、菓子はやり切った感があった。
新分野でのチャレンジとして、2018年にマーケティング本部長として同社に転職した池田氏は、米国に出張した時、非常に硬い豆腐が売られていて、肉や魚の代わりに食べられていることに気づいた。そこで、豆腐の定義を、植物性のタンパク源と変えることで、新しい発想の商品がつくれないかと、ひらめいた。
大豆の値段が上がったといっても、肉や魚と比べればまだまだ価格競争力がある。単純に80円の豆腐を改良して100円で売るのでなく、競争のステージを転換した。
「豆腐バーは、通常の豆腐に比べてグラム単価が約8倍以上に跳ね上がっている。豆腐という伝統ある食べ物の価値を、問い直す提案を行ったつもり」と、池田氏は豆腐バーにかける想いを語った。
豆腐バーの発売は、2020年11月。東京五輪は残念ながらコロナ禍で1年延期されたが、当初はそれを目標に開発してきた。日本はビーガン食品が発達していないので、海外からの観光客の急増が見込まれる、五輪をチャンスと見たためだ。
また、今はサラダチキンを買っているような、健康志向が強くタンパク質が効率的に取れる食品のユーザーに、豆腐は刺さると考えた。
五輪は無観客となり、当初見込んだ外国人は来なかった。しかし、日本人がステイホームで運動不足になって、コロナ太りが増えてきた。なんとか痩せたいと思っていた人たちが、豆腐バーに注目。発売して1年で、約1000万本を販売する大ヒットとなった。
技術的には木綿豆腐をつくるのとプロセスは同じだが、より多く水分を絞り出して硬くする。しかし、豆腐が固まってから水分を抜くのでは上手くつくれない。豆乳ににがりを加える段階で、水分が排出しやすいように、タンパク質の濃度やにがりの種類・量・加え方を工夫し、製法を確立した。
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