そこに加えて、2025年1月にドナルド・トランプ氏が大統領に返り咲くことも無関係ではないだろう。
ご存じのように、トランプ氏は北朝鮮の金正恩総書記を「ロケットマン」と呼ぶなど、公然と人をバカにするような予測不能の爆弾発言が持ち味だ。就任早々、中国へのけん制として、ウイグル綿花を用いたアパレルに対して「強制労働ファッションは米国に入れない」なんてことを言い出す可能性もゼロではない。
つまり、欧州ビジネスを是が非でも成功させたい柳井会長にとって、「新疆ウイグル自治区産の綿花は使ってません」宣言をするには、今がギリギリのタイミングだったというわけだ。
もちろん、これは全て筆者の憶測である。ただ、ユニクロが10兆円の売り上げとアパレル世界一を目指していくためには「中国と欧州のどっちに良い顔をするか」問題に、やはりどこかで向き合わなくてはいけない。
ユニクロとしても中国を捨てることはできない。柳井会長は「中国が重要な市場である」ことはたびたびアナウンスしているが、それ以上に欧州での地位も重要なのだ。
だから、中国の売り上げが大きく落ち込むことがあっても、ここで欧州の消費者から嫌われるわけにはいかないのだ。
このようにグローバル企業は、絶妙なバランス感覚の中で成長を目指さなくてはいけない。実は国も同じで、「あの国は反日だから付き合えない」「国交断絶だ!」と叫んでいるだけでは、国力は衰退していくだけだ。
1984年に1号店を出してから40年で3兆円企業に育てた天才・柳井会長が、欧州と中国という2つの巨大市場の間でどのような「ブランド外交」を進めていくのか。ビジネスパーソンはもちろん、政治家の皆さんもぜひ学んでいただきたい。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル』
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受
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