「おでん」の政権交代? 主戦場はコンビニから外食へ ユニークなお店が続々と生まれる背景長浜淳之介のトレンドアンテナ(6/6 ページ)

» 2024年12月05日 06時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]
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“二毛作”のユニークな店舗も

 同じく、おでんと寿司を組み合わせて人気なのが「鮨とおでん &アンド」だ。飲食コンサルティングを主業務とするTEAM SUPER BEST(東京都港区)が経営し、都内に7店を展開している。こちらは、前述の「寿司トおでん」と異なり、あて巻きだけでなく正統派な握り寿司も提供している。同社では「骨付鳥と鶏ダシおでん 歩」という店も、都内に2店展開している。鶏だしおでんは秋冬の提供で、春夏は京味噌もつ煮に入れ替わるというユニークな業態だ。

鮨とおでん アンド、水菜チーズのおでん
鮨とおでん アンド、さまざまな出汁をブレンドしたおでんを提供

 紹介した以外にも、屋台をほうふつさとせる狭小な立ち飲み系のおでん居酒屋が、各地の盛り場でどんどん立ち上がっている。おでんは外食でありながらテークアウトも期待できるのが、店内でお酒を飲ませないと営業が成立しない一般の居酒屋よりも有利な点だ。

 居酒屋業界の売り上げは、若者のお酒離れや盛り場に集まる人たちが引ける時間が早くなっていることから、コロナ前の7割程度しか回復していないといわれる。しかし、コンビニが自主的に撤退しているおでんには、このように大きなチャンスが生まれている。本稿で紹介したおでんの外食チェーンは、いずれもコロナ禍の最中または直前に誕生し、成長の曲線を描いている途中であり、伸びしろは大きい。

 中でも抜けているのは「おでん屋たけし」と「呼炉凪来」だが、勝負はこれからだろう。

 このほか、首都圏と静岡県に店舗展開する立ち飲み居酒屋の「かぶら屋」(52店、2024年11月末時点)でもおでんを提供している。静岡おでん風の色が黒い「黒おでん」で、同店の人気商品だ。

 今後、静岡市や姫路市のご当地おでんから、全国チェーンが生まれる可能性もある。

 一方で、コンビニおでんは郊外ロードサイドで根強く残り、外食と商圏を棲み分けるのかもしれない。

 ファミリーマートでは「おでんは前年に対して好調な売れ行き。コンビニでは肌寒い季節に、手軽におでんが買えるので、昼ごはん、晩ごはん、晩酌のつまみにも、おでんがもっとお客さまの身近なものになることを目指して、商品開発していく」(同社・広報)と意欲を見せる。

 いずれにしても、どのチェーンが代表的なブランドになるか、コンビニから外食への“おでん政権交代”の行方をウォッチしていきたい。

かぶら屋の店舗
かぶら屋の黒おでん(出所:かぶら屋公式インスタグラム)

著者プロフィール

長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)

兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。


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