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ソニーの営業一筋50代社員、シニアインターンで切り開いた“第2のキャリア”(1/2 ページ)

» 2024年12月24日 08時30分 公開
[大久保崇ITmedia]

 人生100年時代を見据えたリスキリングの重要性が叫ばれている。ソニーグループは2017年、50歳以上の社員を対象としたキャリア支援プログラム「キャリア・カンバス・プログラム」を始動。

 同プログラムの中には、シニアインターンシップなど独自の施策があり、地方自治体や企業との連携を通じて、ふるさと納税額の倍増や地域企業の人材育成など、シニアのキャリア支援に加えて具体的な成果も生み出してきた。

 そんなプログラムや施策の立案・運営に携わってきた、ソニーピープルソリューションズ 執行役員の大塚康氏、EC人事部の坂口武氏、そして実際にシニアインターンシップに参加し、現在も地方企業に副業として関わっている、ソニー セキュアテクノロジー&ソリューション事業部 営業部の比留間優子氏に、制度の狙いと成果について話を聞いた。

福島県大熊町でのシニアインターンシップの様子(画像:以下、ソニー提供)

ソニーに合わないと思ったら新しい会社を見つけた方がいい

 「入社式の日に、必ずソニーが自分に合っているかどうかを考えてほしい。合わないと思ったら、人生一回だし、早く新しい会社を見つけた方がいい──」。大塚氏はソニー創業者の1人である盛田昭夫氏の言葉を引用しながら、社員の自律を重んじる社風を説明する。

 同社は2017年、50歳以上の社員を対象とした「キャリア・カンバス・プログラム」を開始。「真っ白なカンバスに次のキャリアを描いてほしい」との願いを込めたこのプログラムは、社員の平均年齢上昇やバブル世代の大量採用層が50歳を超えたことを背景に始まった。

 プログラムは研修やメンター制度、10万円を上限とした学び直し支援「Re-Creationファンド」など、複数の施策をパッケージ化。特徴的なのは、学ぶ内容を会社が指定せず、社員自身が選択できる点にある。「社員が自ら考えて選ぶ方がソニーらしい」と大塚氏。

 実際、プログラムを通じて習得されるスキルは、現在の業務に直結するデジタルスキルから将来の夢の実現に向けたものまで多岐にわたる。

 例えば、ある社員は訪日外国人向けのゲストハウス運営を見据え、日本の文化体験として提供するためのうどん打ちの技術を習得。キャリアの選択肢を広げながら、次のステージへの準備を進めている。

シニアインターンでふるさと納税額を10億円に倍増 社外との協創

 こうしたプログラムの一環として、2021年からスタートしたのが「シニアインターンシップ」だ。50歳以上の社員が、地方自治体や企業と協働して地域の課題解決に取り組むプログラムである。

シニアインターンシップにおける、社外体験プログラムのバリエーション

 「長年、会社という枠の中で培ってきた経験やスキルが、社外でどれだけの価値を持つのか。それを実際に試す場として設計しました」と話すのは、プログラムを担当する坂口氏。

 50代にもなると、会社への貢献だけでなくより大きな社会貢献をしたいという思いを持つ社員が増えるという。そんな思いと地域社会のニーズをマッチングする場として、インターン先は地方自治体での地域活性化支援、地域企業の経営課題解決、大学での研究推進支援など幅広い。

 シニアインターンシップは受け入れ側にも大きな成果をもたらしている。佐賀県江北町では、小中学校の老朽化対策のための財源確保が課題となっていたが、プロジェクトチームが地域の魅力を掘り起こし、効果的なプロモーション戦略を立案。ふるさと納税の寄付額を5億〜6億円から10億円へと倍増させた。

 プロジェクトの期間は2〜3カ月。参加する社員は2〜6倍の倍率の中から選抜され、5〜6人程度のチームで課題解決に取り組む。「単にソニーの知見を提供するだけでなく、社員自身が現地に入り込んで地域の方々と一緒に考える。その過程で社員も大きく成長します」と坂口氏は手応えを語る。

シニアインターンシップ参加者の声

 インターンシップを経て、支援先企業での副業開始、NPO法人設立による子どもの教育支援、大学教員など新しいキャリアに転身する参加者もいる。50代以降の社員たちにとって、シニアインターンシップは自身の可能性を広げる重要な機会となっているようだ。

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