シニアインターンシップを通じて自身の可能性を広げた1人が、ソニーで非接触ICカード技術「FeliCa(フェリカ)」の法人営業を担当する比留間優子氏だ。入社後、メディア事業のプロモーションなどを経験し、法人営業として10年以上のキャリアを重ねてきた。
【訂正:2024年12月24日午後2時10分 初出で「Felica(フェリカ)」と記載しておりましたが、誤りがありましたので「FeliCa(フェリカ)」に訂正いたします。】
「50代を前に、このまま今の仕事を続けていくべきか、新しい挑戦をすべきか考えていました」と比留間氏。そんな折に目にしたのが、シニアインターンシップの募集だった。「『ふるさと高知県』という言葉に引かれました。自分のルーツである高知で、何か地域に貢献できることがあるのではないかと思ったんです」と、当時を振り返る。
高知県での企業支援プログラムで出会ったのが、地域の鋳造メーカーだった。最初は全く畑違いの業界で戸惑ったというが、「工場見学をさせていただいた際、造船や自動車の重要部品を手がける素晴らしい仕事なのに、現場の皆さんがその誇りを実感できる機会が少ないように感じました」と、自分なりの気付きを経営者に共有。
「自社に足りてないことはそういうところ。ぜひ支援してもらえないか」と相談され、比留間氏は人材育成面での支援を依頼されることになったという。
現在(2024年11月時点)も副業として、社員の意識改革や採用活動、展示会運営など幅広い業務に携わる。「B2B営業で培った『相手の話をよく聞いて課題を整理する』というスキルが生きています」(比留間氏)
また、社外での経験は、本業にも好影響をもたらしている。地方自治体のDX推進に関わる機会が増えたことでFeliCaビジネスに新たな展開が生まれ、社外での経験が自信となり社内での提案もより積極的になった。
こうしたインターンシップ参加からおよそ2年。比留間氏は「この制度がなければ、新しい分野に踏み出す勇気は持てなかったかもしれません」と自身の経験を振り返る。
キャリアについての「気付き」を「行動」へとつなげるため、同社が重視しているのがメンター制度だ。全ての50歳以上の社員に対して、上司でも人事部門でもない社内メンターを付ける仕組みである。
メンターを務めるのは実際の職場で働く社員たち。「研修で得た気付きを具体的なアクションにつなげるには、継続的なサポートが必要です」と坂口氏は説明する。
現在約30人のメンターが勤務時間の10〜20%程度を相談業務に充てている。メンターは「部下が相談に来るところをよく見かける人」や「組織や部下の教育研修活動に熱心な人」といった条件で選出。上司や人事部門とは異なる立場から、キャリア構築をサポートする。
実際に支援を受けた比留間氏も、その効果を実感している。「2社目の副業に挑戦するかどうか迷っていたとき、メンターに相談して背中を押してもらえました。おかげで新しい分野にチャレンジする勇気が出ました」と話す。
「会社として、長くソニーで頑張り続けたい社員も、新しいことに挑戦したい社員も、どちらも全力でサポートしていきたい」と大塚氏は意気込みをみせる。
実際、プログラムを通じて社内で活躍の場を広げる社員もいれば、副業や起業にチャレンジする社員もいる。多様な選択肢を用意することで、社員一人一人が自身の意思で次のステップを選択できるようになってきている。
「シニア層の活躍は、これからの日本企業にとって重要な経営課題です」と大塚氏。人生100年時代、一人一人が自分らしいキャリアを築いていく。ソニーの取り組みは、その実践例の一つといえるだろう。
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