日本のダンスの市場が熱気を帯びている――。2024年パリオリンピックの新種目ブレイキンではAmi(湯浅亜実)が初代女王に輝いた。男子の代表Shigekix(半井重幸)も4位に入っている。彼らは10月に新シーズンが開幕したプロのダンスリーグ「D.LEAGUE」(Dリーグ)にも参戦。ダンスの人気向上に一役買っている。
2028年ロサンゼルスオリンピックでブレイキンは正式種目から外れるものの、同リーグを運営するDリーグ社の神田勘太朗COOは「ダンスのビジネス市場は伸びる一方」と、今後の運営に自信を見せる。創設5年目にして、すでに黒字化も視野に入り「将来的には米国、中国、欧州への展開も視野に入れている」と強気だ。Dリーグの展望を聞いた。
神田勘太朗(カリスマカンタロー)起業家・ダンサー・ダンスクリエイティブディレクター。カリスマホールディングス代表取締役。アノマリー代表取締役CEO。Dリーグ代表取締役COO。世界最大のダンスバトル大会「DANCEALIVE」のプロデュースを皮切りに、グローバルコミュニケーションの1つとしてダンスは共通言語であることに着目し「ダンスで世界を変える」を掲げビジネス展開を拡大。プロデュース案件はイベント企画から運営、振付、ダンサー派遣、オンラインレッスンプロデュースや、映像制作、海外でのダンス関連の仕事など多岐にわたり、若年層を中心としたコミュニティブランドの形成を得意とする。2020年8月に発表された世界初のダンスのプロリーグを運営するD.LEAGUE代表取締役COOに就任。ダンスの知財化プラットフォーム「MOTIONBANK」では、誰でも振付を作れるようになり、ダンスの著作権まで管理・運用ができる世界を目指しているDリーグは、2024〜25年シーズンで5年目を迎える。同リーグが発表した資料によると、日本のダンスの潜在市場規模は600億円に達し、2025年の競技人口は1100万人に達すると予想している。2012年には学校の授業でもダンスが必修化された。小中高を加えた市場規模は約2000万人に上る巨大市場だ。
Dリーグはオーディエンスの支持を得るために毎年、フォーマットやルールを微調整してきた。今シーズンはジャッジの評価の中で「シンクロパフォーマンス」「エースパフォーマンス」「テクニック」「オーディエンス」など6項目で審査する。
例えば、今シーズンから導入したシンクロでは、各チーム8人の出場ダンサー全員が踊りを合わせる必要がある。「チームでピッタリと踊りを一致させることは、努力次第で良くなります。練習量の絶対値が1つの基準になると考えました」
スマホなどで聴衆が投票するオーディエンスは、以前から審査項目の一つに入っていた。投票しやすくするために、UIの設計にも気を配っている。「オーディエンスによるジャッジは絶対にやるべきだと、Dリーグが始まったときから言ってきました。SNSによってネットが民主化された中、スポーツがオーディエンスの意見を取り入れないのが不思議だったからです」
そのためプロの審査員の評価と、客の判断とのベストなバランスを模索してきた。「やっと良いバランスが見つかりました。(聴衆にとっては)もし自分の投票判断と、ジャッジが認めたチームが一致していれば、自分たちの納得性も上がりますから」
Dリーグの強みは、客層の若さにある。同リーグが開発したアプリによると、年代別のファン層では10代が15.6%で、20代が36.6%だという。性別では女性が63.8%、男性が36.1%だ。
「平均年齢が24歳と、他のプロリーグと比べてもかなり若いです。若年層の取り込みや、ファンになってもらうという意味では、ある程度クリアしていると思います」
平均年齢が40代を超えるJリーグの現状を考えると、Dリーグの強みがはっきりするはずだ。筆者も試合会場に足を運び、客層が若いことを実感した。
ただ、他のプロリーグも手をこまねいているわけではない。バスケットのBリーグは各種の改革を進めたことによって昨シーズンから人気が沸騰した。バレーボールでも2024年、新しくSVリーグが始まった。Dリーグにとって差別化のカギはSNSの活用だ。「Dリーグのファンは、TikTokなどのSNSは当たり前にする世代です。ファンの方々の手によってDリーグは勝手に拡散されるので、その辺りについては他のプロリーグと比べてアドバンテージがあると思います」
拡散方法は意外に素朴なものだ。例えばInstagramのリールにアップした動画は、各チームのリーダーに「拡散してください」とお願いする。
もう1つ、勝手に拡散されるケースもあるという。「ダンスをやっている子たちは、クラスの中のインフルエンサー的な存在なんです。学校の人気者たちがダンスをやるので、その子たちが『今これがはやっている』というと、周りの生徒もそれを見ます。そうなれば、あとは自動的に拡散されていくのです」
この状況は、若者との接点で悩む企業をひきつける。「若い世代にアプローチしたいけれども、どこにすればいいか分からない」「CMで宣伝してもなかなか若い世代に伝わらない」と悩む企業がDリーグをプロモーションの場と見なしているのだ。SNSに力を入れているDリーグは、いち早く若い世代に接続できる場になっている。スポンサーリストを見ると、タイトルスポンサーが第一生命。その他ソフトバンク、三井住友銀行、日本コカ・コーラといった「ナショナルクライアント」が名を連ねている。
ここまで若者を引き付けたのは、体育の授業でのダンス必修化が大きい。今の中学生約314万人は、水泳と同じく年間約9時間のダンスを習う。好き嫌いは別として、誰もが1回はダンスの道を通る。「TikTok、K-POPなどを見て、ダンスをやりたいと考える人はいると思います。ダンス自体がかっこいい、モテる、かわいいという要素があるので、自己承認欲求も満たしてくれるのです」
他のスポーツと大きく違うのが、Dリーガーはダンススクールなどの先生をやっているケースが少なくないことだ。ファンは憧れの先生に習える可能性があり、そうなった場合、「選手とファン」の関係から「先生と生徒」の関係に変わることがある。もし本当にダンスが上手になれば、「先生」が所属するチームに入り、生徒だった人がDリーガーとして踊れる可能性もゼロではない。
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