「話している内容」も成果に影響します。アポイントや受注につながった商談を分析対象として、よく使われるキーワードの出現回数を調べることができます。さらに、音声を聞き直すことで、よく使われるキーワードはどのような文脈、話題のときに使っているのかという内容を見ることもできます。
例えば、受注につながった会話には、カスタマーサポートの手厚さなど、サービス導入後のサポートに関する言葉が多く含まれていて、受注につながらなかった会話にはそのような単語が少なく、「今なら安く加入できる」「他社より安い」という導入前の言葉が多く含まれているといったことがわかれば、このような差が受注率に影響しているのではないかと仮説を立てることで、スクリプトを変更したり、キーワードを多く入れたりという改善ができます。
営業成果は、「話し方」や「話す内容」の他に、行動面も分析できます。具体的には、営業担当者が「いつ」「誰に」「何回電話をしたか」「訪問したか」という履歴を確認し、ハイパフォーマーとミドルパフォーマーの行動を比較します。
多くの企業は電話や顧客訪問の回数といった「行動量」をKPIとして設定しています。行動の分析では、まず各営業担当者がこれらのKPIを達成しているかどうかを確認する必要があります。成果が出ない原因は、話し方やスクリプトの問題ではなく、そもそも成果を出すための行動量が足りていない可能性も考えられます。
インサイドセールスが電話をかける回数を例にすると、過去に電話をかけた時間帯の通電率を分析することで、電話をかける回数を増やさなくても効率よくアポイントが取れるようになるかもしれません。
また、ある企業では、電話をかけてから何回コール音が鳴るまで待つかを分析し、3回で切る人よりも5回まで待つ人のほうが多くアポイントを取れていることが分かりました。
これまでは、人を増やし、売り上げを増やしていくことが主流でした。しかし、人手不足が深刻になるこれからの時代は、やみくもに行動量を増やすのではなく、このような細かな分析により、少人数でも生産性をあげ、受注率を高める方法を見つけることが求められます。
また、人材の流動性が高まり、転職がめずらしくなくなった昨今の状況を鑑みると、一部のハイパフォーマーだけに頼るのはリスクです。属人性が高くなるほど、その人がいなくなったときに収益が大きく減るリスクが増加します。
そこで、個人単位ではなく営業部門全体としての成長を目指す営業活動のイネーブルメントが注目されるようになりました。営業活動のイネーブルメントを成功させるためには、成約/失注の要因やパフォーマンスのバラつきなど「営業のなぜ?」を、数値化された事実をもとに把握することが不可欠です。
また営業活動には、さまざまな要素が複雑に絡み合っているので、大量のデータを元にAIを活用したイネーブルメントを実現できると理想的です。営業現場の会話データの収集・活用は企業のセールスイネーブルメントの重要な鍵となります。
「音声データ」は営業をどう変える? インサイドセールスと親和性が高いワケ
社内に眠る「音声データ」を収益源に AI時代に求められる「データ蓄積」の仕組みづくりとは?
AI時代に「音声データ」が持つ価値とは? コミュニケーションを”資産化”する方法
根性論をなくす 人材育成を変革する「音声データ」活用法とは?Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング