ビジネスシーンでAI活用が広がっている。AIに学習させられるデータは、テキストや画像だけではない。実は有効活用できるにもかかわらず、多くの企業が気付いていない宝の山、それが「音声データ」だ。「音声×AI」を軸としたサービスを展開するRevComm(東京都渋谷区)の會田武史・代表取締役が、音声データが有する潜在的な価値と、AI技術で最大限に活用する方法を解説する。
ChatGPTの登場からも分かるように、生成AIをはじめとする技術はこの数年間で爆発的な進化を遂げています。音声技術も例外ではなく、AIとの対話が自然になる日も遠くありません。
本連載では、AI時代に音声データが持つビジネス価値について紹介してきました。音声の重要性に注目する人は増えていますが、生産性向上や新たな価値の創造に結びつけた事例はまだ少ないのが現状です。
音声データの収集、蓄積、分析、共有の仕組みを構築することは、企業にとって競争優位を築くチャンスとなります。今回は、音声データの蓄積と、従業員の意識改革を進めるための具体策について解説します。
株式会社RevComm代表取締役
三菱商事株式会社にて自動車のトレーディング、クロスボーダーの投資案件・新会社設立、M&A案件等に従事。
2017年7月株式会社RevComm設立。電話解析AI「MiiTel Phone」、Web会議解析AI「MiiTel Meetings」、対面会話解析AI「MiiTel RecPod」を提供。
著書に『音声×AIがもたらすビジネス革命 VOICE ANALYSIS』(幻冬舎)がある。
音声データの収集の観点で見ると、すでに多くの企業が、PCやスマートフォンなどの集音機能を備えたデバイスを活用しています。オンライン会議の録音ファイルが蓄積されている企業も多いでしょう。しかし、音声データを効果的に活用するには「いつ、誰と、どのようなテーマで話したのか」というタグ付けを行い、構造化されたデータとして蓄積する必要があります。
録音ファイルがすでにたくさんある場合、それらにタグ付けすることもできますが、その労力よりも、新しく音声データをためるほうが早い場合もあります。会話、会議、商談は日々、あらゆるところで行われているので、日常業務の中で自然にデータを蓄積できる仕組みを整えれば、数カ月で膨大な量の良質なデータを集めることが可能です。
次に、収集した音声データを分析するにあたっては可視化、定量分析、定性分析の3段階で進めていきます。
音声解析結果をもとに、キーワードの出現回数や商談成立までの商談回数、会話時間の推移を把握します。この段階では、全体の傾向をつかむことが目的です。
次に、具体的な数値データをもとに分析します。例えば、ハイパフォーマーの営業活動を数値化し、アポイント数や商談回数、商品のアピールポイントを伝えた回数などを分析することで、営業活動の改善点や、次に取るべき具体的なアクションを導き出せるようになります。
商談で特定のキーワードが増加していることが分かった場合、その背景にある顧客の課題やニーズを深掘りし、それに基づいた営業戦略やスクリプトを作成することができます。また、音声データを市場、競合、業界というマクロデータと組み合わせることで、新たなターゲットや市場開拓のヒントが得られます。
AIはデータ分析に優れていますが、その結果をどう解釈し、仮説を立て、戦略に落とし込むかは、現段階ではまだ人が関わる必要があります。高度な分析においては、データサイエンティストをはじめとする外部の専門家に参画してもらうのも選択肢の一つです。
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