小売各社がPBの品目数や売り上げの向上に注力してきたことは、いうまでもありません。過去のPBといえば、メーカー商品のパッケージを差し替えしただけのような形で「安かろう悪かろう」「ナショナルブランド(NB)の廉価版」といったイメージもありました。
近年は大手各社が品質改善にかじを切り、PBは「価値あるものが安い」という認知が高まっています。2024年もさまざまな商品が話題を呼び、価値もさらに多様化しました。
ドン・キホーテの「ラクラクぶっこみキャリーケース」は「立てたまま荷物をぶっこめる」というコピーで、出張や旅行の際、ケースを床に横にして荷造りするストレスや手間を解消した商品として話題を呼びました。また、同チェーンの「どこでも置くだけエアコン」は、冬場に寒い洗面所やトイレで「ここにエアコンがあったらな」と感じる消費者のニーズに対応しています。
その他「秒でどこでもTKG!?卵かけ風ご飯のたれ」は、卵と醤油を別容器に入れてかき混ぜる手間を省き、容器を割るだけでかけられる商品です。TikTokでも話題を呼びました。これらは、生活の中で生まれる「ふとした要望」を見事につかんだ商品です。不満としてわざわざ声に出さないまでも、日々ちょっと不便に感じている困りごとを解決する。ドン・キホーテでは、そうした商品が多いのが特徴です。
PBに注力しているのはドン・キホーテだけではありません。カインズの「掃除もできて洗濯機で洗えるスリッパ」は、スリッパの裏がホコリを吸着する素材になっており、歩くだけで掃除ができてしまう商品です。「挟んで使えるクッション」も、いすの背もたれやデスク、マットレスに挟むなど、さまざまなシーンで使えます。これらは単一用途ではなく一石二鳥、三鳥の価値があることが特徴です。
イオンでは2025年までに、全ての「トップバリュ」商品を「環境貢献3R商品(Reduce/Reuse/Recycle)に切り替えると発表しています。消費者がトップバリュ商品を購入するだけで、気軽に3R活動に参加できるという、小売業ならではの価値を付加しています。10月にグループ18社6200店舗にて「えらぼう。未来につながる今を」と冠したフェアで環境配慮型の商品を提案したり、参加型のイベントを開催したりと、環境貢献の動きを強化しています。
環境という点では、4月にキリンビールが発売した「晴れ風」は、売り上げの一部を「日本の風物詩」に寄付をする価値を備えています。花見や花火などの保全・継承に寄付し、ビールを楽しむシーンをともに大事にしていこうというアプローチです。
このように商品の価値が多様化している中で、単に「低価格で高品質」なだけではない、環境貢献や生活課題の解決、効率化といった付加価値が求められる時代になっているのです。
イオン、セブン、ドンキ…… なぜ安くて価値ある独自商品が次々と生まれるのか 注目すべきPB10選
24期連続増収のスーパー「トライアル」 安さだけではない、納得の成長理由Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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