イオン、セブン、ドンキ…… なぜ安くて価値ある独自商品が次々と生まれるのか 注目すべきPB10選(1/3 ページ)

» 2024年09月30日 05時00分 公開
[佐久間 俊一ITmedia]

著者プロフィール

佐久間俊一(さくま しゅんいち)

レノン株式会社 代表取締役 CEO

城北宣広株式会社(広告業)社外取締役

著書に「小売業DX成功と失敗」(同文館出版)などがある。

グローバル総合コンサルファームであるKPMGコンサルティングにて小売企業を担当するセクターのディレクターとして大手小売企業の制度改革、マーケティングシステム構築などDX領域のコンサルティングを多数経験。世界三大戦略コンサルファームとも言われている、ベイン・アンド・カンパニーにおいて2020年より小売業・消費財メーカー担当メンバーとして大手小売企業の戦略構築支援及びコロナ後の市場総括を手掛ける。2021年より上場会社インサイト(広告業)のCMO(Chief Marketing Officer)執行役員に就任。

2022年3月小売業と消費財メーカーの戦略とテクノロジーを専門にコンサルティングするレノン株式会社を設立。

2019年より1年半に渡って日経流通新聞にコーナーを持ち連載を担当するなど小売業には約20年間携わってきたことで高い専門性を有する。

日経MJフォーラム、KPMGフォーラムなど講演実績は累計100回以上。


 日本の小売市場が店舗飽和状態であることは、いうまでもありません。各業態の主要プレーヤーが出店攻勢を繰り返した結果、コンビニ、スーパー、GMS(総合スーパー)、ホームセンター、ドラッグストア、ディスカウントストア、100円ショップ、ユニクロやニトリといった専門店など、私たちの生活に店舗網は余りあるほど整備されました。

各社が強化しているPBに迫る(出所:ゲッティイメージズ)

 店舗が増えると、必然的に1店舗当たりの収益が悪化します。もちろん、一部の近隣店舗が淘汰されて撤退することで残存者利益を得るケースもあることでしょう。しかし多くの店舗は人口減少と競争環境激化による客数減というリスクにさらされ、収益維持のために次の選択を余儀なくされています。

(1)粗利率の高い商品を売る

(2)原価率を下げる

(3)新しい事業を付加し新しい収益を得る

(4)経費を削減する


 このうち(2)は為替変動や製造業の値上げにより、下げるどころか上がっていく傾向にあります。(3)は小売業各社のリテールメディアなどが好例ですが、既存事業にインパクトを与えるくらいの規模に拡大するまで時間を要するケースが多いのが実情です。

 (4)は最低賃金の上昇、物流のいわゆる2024年問題などで高騰の傾向にあり、デジタルで補完するとしてもITコストが先に支出されることになり、成果を及ぼすのは先の話です。これらを踏まえると、最も大きな光ともいえるのが(1)であり、各社はこのためにNB(ナショナルブランド)よりも粗利率が高いPB(プライベートブランド)を開発し、売上比率を高めていくことに注力しています。

 特に食品においては、日経新聞の「PBの衝撃、物価高で存在感増す 小売りの戦略まとめ読み」(2024年1月8日)で紹介されているインテージのデータにもある通り、消費者物価指数の上昇と比例するようにPB比率が向上しています。つまり、物価が上がると各社は低価格で価値のあるPBにシフトする傾向にあることが見てとれます。

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