このトンネルが貫く高島山(神奈川区高島台)は、横浜の実業家で易学者でもあった高島嘉右衛門(かえもん)(「高島易断」の祖、1832〜1914年)ゆかりの地だ。嘉右衛門は洋学校「高島学校」の開設や、ガス事業をはじめ、都市としての横浜の形成期に大きな功績を残した、「横浜の恩人」の1人ともいわれる人物である。
嘉右衛門は鉄道との関係も深く、新橋―横浜(現・桜木町)間に敷設された日本初の鉄道建設工事に際し、力を尽くしている。袖ヶ浦とよばれる深い入江で工事の難所とされた、現在の神奈川区青木町付近から桜木町駅(初代横浜駅)手前までの海面埋め立て(築堤)を請けおい、その工事を高島山(当時は大綱山とよばれた)から指揮監督した。
嘉右衛門によって造成された埋立地は「高島町」と命名され、今もその名を残している。なお、高島山の頂上部にある「高島山公園」には、嘉右衛門を顕彰する「望欣(ぼうきん)台の碑」が立てられている。
実業界から身を引いた嘉右衛門が、かつて埋め立て工事を指揮したこの高台に大規模な山荘を築き、横浜の繁栄する様子を望みながら、「ひとり欣然(きんぜん)として心を癒やした」(「望欣台の碑」の説明板)ことに由来するという。
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