旅行・鉄道作家、ジャーナリスト。
現在、神奈川県観光協会理事、鎌倉ペンクラブ会員。旅行、鉄道、ホテル、都市開発など幅広いジャンルの取材記事を雑誌、オンライン問わず寄稿。メディア出演、連載多数。近著に『湘南モノレール50年の軌跡』(2023年5月 神奈川新聞社刊)、『かながわ鉄道廃線紀行』(2024年10月 神奈川新聞社刊)など。
2022年はわが国初の鉄道(新橋-横浜間)が、1872年に開業して150年ということで盛り上がった。また、2023年は貨物鉄道150年の節目だった。そして2025年は世界初の実用的な鉄道がイギリスのストックトンとダーリントン間で開業してから200年という、記念すべき年になる。
では、今年2024年はというと、モノレール(1本レールの鉄道)が歴史に登場してから200年目なのである。
歴史上、初めて登場したモノレールは、1824年にイギリス人のヘンリー・パーマーが、木材のレールと馬力を用いた貨物用モノレールをロンドンの造船所に建設したものとされる(特許登録は1821年)。2本レールを敷くよりも1本のほうが簡易で安上がりだというのが発案の理由であろう。
その後、さまざまな形式のモノレールが考案され、研究・実験が進められた。レールに跨がる跨座(こざ)型、レールからぶら下がる懸垂型、さらにジャイロスコープ(回転儀)を用いてレール上に直立させる方式などである。
だが、2本レールの通常の鉄道が敷設できるのであれば、バランスを取るのが難しいモノレールをわざわざ建設する積極的な理由がなく、パーマーのモノレールの誕生後1世紀の間で、モノレールが営業線として成功したのは、1901年に開通したドイツのヴッパータール空中鉄道が唯一の例だった。
このヴッパータールという、それほど知名度の高くない都市にモノレールが建設されたのは、川沿いの狭い谷間に市街地が広がっており、川の上空以外に公共交通を走らせる用地を確保できないという特殊な事情によるものだった。ドイツ人技師のカール・オイゲン・ランゲンが開発した「ランゲン式」を採用したこのモノレールは、今なお現役で運行されている。
モノレールが日の目を見たのは、意外にも戦後の高度経済成長期の日本においてだった。モータリゼーションの進展による交通渋滞は各国の都市で悩みの種になっていたが、道路率(道路面積/土地面積)が極めて低い日本の都市(東京23区10%、ニューヨーク35%、ロンドン23%)において、渋滞対策の特効薬として注目されたのだ。
街路上空のスペースを有効活用でき、簡易な構造物のみで建設できるため美観を損ねることもない。さらに当時、建設が始まっていた地下鉄と比べて建設費が安価(地下鉄の4分の1程度)で工期も短くて済むとされ、中容量の乗客輸送であれば、モノレールが最適と考えられたのだ。
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