だが、一方でLRT化構想を断念した事例もある。富山県内を走るJR城端線(高岡-城端間)・氷見線(高岡-氷見間)もLRT化が検討されてきたが、2023年3月までにLRT化を断念すると結論づけられた。代わりに、国の新たな支援制度(改正地域交通法。2023年10月施行)を活用しつつ、「新型鉄道車両の導入」を含む利便性の向上を目指すことになった。
なぜ、LRT化が見送られたのか。
LRT化検討会に提出された資料を見ると、城端線・氷見線のLRT化に必要な費用(車両数は25編成75両を前提)は、架線ありの場合で435億円(うち車両費114億円)、蓄電池式による架線なしの場合で421億円(うち車両費191億円)と試算されている。これは新型鉄道車両26両を導入する場合の131億円(高岡駅での両線の直通化費用30億円を加えると161億円)や、BRT化する場合の223億円(75台分の車両費21億円、道路整備費135億円など)を大幅に上回る。
また、同資料では富山港線は電化されていたためLRTへの切替えが約2カ月で済んだが、城端線・氷見線は非電化のため、より長期の運休(約2年)が必要となることや、低床型車両は冬季に運行障害を起こすリスクが高いといった点も指摘されている。
その後の2024年2月8日、城端線・氷見線に関して、あいの風とやま鉄道への事業譲渡を前提とする「城端線・氷見線の鉄道事業再構築実施計画」が国交省から認定された。同計画では、新型車両の導入をベースとする事業費合計を341.2億円(新型車両の導入に173億円、運行本数増加・パターンダイヤ化に44.8億円、高岡駅での両線の直通化に37.8億円など)と試算され、事業費が膨れ上がった印象だ。
だが、それでもLRT化と比べると、なお割安なのである。もちろんケースにもよるが、「LRTは、地域交通を維持するための選択肢として本当に安いのか」という問題意識が浮き彫りになった事案といえよう。
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