この記事は、水野臣介氏の著書『人材ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)に、編集を加えて転載したものです(無断転載禁止)。なお、文中の内容・肩書などは全て出版当時のものです。
ダイレクトリクルーティングの登場によって、転職市場は大きく成長しました。
ダイレクトリクルーティングとは、企業が求人広告を出すのではなく、求職者に直接アプローチする手法です。例えばLinkedInやSNSを利用して、求職者のプロフィールを見て直接連絡を取ります。
従来の求人手段は、求人広告やメディアなどに求人内容を掲載し、求職者からの応募を待つスタイルでした。近年は、労働人口の減少や売り手市場が続いたことで、転職潜在層に対しても積極的なアプローチをするようになったのです。
求人企業はダイレクトリクルーティングを使い、積極的に人材を探し出してアプローチします。
適性の高い人材が見つけやすくなり、迅速な採用が可能になることが利点です。そしてこの手法は、転職だけでなく新卒採用にも拡大しました。その一方、プライバシーに関する懸念や求職者が望んでいないタイミングでの連絡が問題となるケースもあり、利用する企業側には十分な注意が必要です。
転職市場の7割が、転職に対して関心を持ちながらも実際には転職活動をしていない「転職潜在層」です。企業から来たスカウトメールを見て考え直し、転職に至ったという話もよく聞きます。転職活動中の顕在層だけでなく、潜在層にまでアプローチを広げたい企業にとって、ダイレクトリクルーティングはもってこいの手法なのです。
これが普及することは、若年層にどう影響するのでしょうか。
求人誌の中から行きたい転職先を決め、自ら書類を送付し「仕事を獲得しに行く」かつてのプロセスは、まさに「ジョブハンティング」でした。今ではプラットフォームに自分のキャリア情報をアップしておき、興味を示した企業からのアプローチを待つことが主要な転職プロセスになりました。
結婚に置き換えるなら、プロポーズをする側がされる側に変わったイメージです。買い手市場から売り手市場になったことが大きな要因のひとつと言えます。
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