また、こうした盗聴については、国によっては法律違反にもなり得る。いま、アクティブリスニング(積極的に聞く)技術というものが米国のマーケティング企業などで注目されていて、広告ターゲティングのために周囲の会話を分析する技術を開発する動きもある。しかし、その合法性についてはまだ議論が必要だとみられている。日本なら、憲法21条の通信の秘密に抵触する可能性がある。
要するに、スマホが普段からユーザーの通話を聞いているという事実はないと考えていい。
示談になった冒頭のAppleのニュースも、そもそもSiriに質問をすれば、その内容は情報として記録される。ただ、Appleは広告などには使っていないと断言しているので、そこは信じるしかない。それでもまだ心配なら、ユーザーの判断でSiriをオフにするなどの対策もできる。筆者は、音声アシスタントはセキュリティのために必ずオフにしている。
怖いのは、今のデバイスではこうした音声収集をたやすくできてしまう事実だ。よく分からないアプリをダウンロードして、利用規約をまともに読まずに「合意」をタップして使ってしまうと、音声が記録されることもあり得るので注意が必要だ。
シンギュラリティうんぬんがサイバー専門家らの間で語られているが、デジタル化が進んだこの世界で、ビジネスパーソンはAIに負けないようリテラシーを身に付けておくべきだろう。
山田敏弘
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)、『死体格差 異状死17万人の衝撃』(新潮社)、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。
Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル」
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