アクセンチュアも「DEI目標」を撤回 トランプ大統領の影響で強まる、「包括性」への重点シフト

» 2025年02月17日 14時26分 公開
[Lamar JohnsonHR Dive]
HR Dive

 コンサルティング大手Accenture(アクセンチュア)は、米ドナルド・トランプ大統領の反DEI(多様性・公平性・包括性)政策に対応するため、従業員の多様性に関する目標およびその他のDEIプログラムを廃止することを決定した。

全従業員が帰属意識を持てるようにする

 AccentureのCEOであるジュリー・スウィート氏は、2月6日に全従業員向けのメールでこの変更を発表した。これには、従業員の構成比率目標の廃止に加え、特定の人口層向けのキャリア開発プログラムの終了、及び外部の多様性ベンチマーク調査への参加取りやめが含まれる。

 スウィート氏は、この決定の背景に、トランプ政権による民間企業のDEIプログラムを標的とした大統領令があることを明言した。さらに「当社の内部ポリシーや実務の継続的な評価、そして米国内の変化する環境を考慮した結果」であると説明し、今後は「多様性目標を業績評価の指標として使用しない」方針も示した。

(写真はイメージ、iStockより)

 トランプ大統領は、1月20日の就任直後に、前政権が推進したDEI関連の政策を撤回する大統領令を発令し、翌21日には政府機関に対し、民間企業のDEIプログラムを監視するよう指示した。2024年の一連の撤回措置に続き、2025年も企業のDEI方針の見直しが相次いでいるが、Accentureもこの動きに追随する形となった。

 スウィート氏のメモは、米国司法長官のパム・ボンディ氏が、民間企業および教育機関における「違法なDEIおよびDEIA(多様性・公平性・包括性・アクセシビリティ)関連の優遇措置、義務、政策、プログラム、活動の調査・撤廃・処罰を行う」と発表した翌日に公表された。

 スウィート氏は従業員向けのメッセージで、これまでの多様性目標に代わり「全ての従業員がより強く帰属意識を持てるよう、包括性(インクルージョン)と一体感の向上に重点を置く」と説明した。

 「当社は、常に能力主義(メリトクラシー)を基本とする企業である」と述べ、「バイアスのない、能力に基づいた職場環境の実現に引き続き取り組み、全ての従業員が尊重され、帰属意識を持ち、平等な機会を得られる文化を維持していく」と強調した。

AccentureのDEI方針の変遷

 Accentureは2017年に初めて従業員構成比率目標を設定し、2020年にその内容を更新していた。過去の企業Webサイトの記録によると、2025年までに男女比を均等にすることを目標として掲げていた。しかし、2023年時点の最新の報告によれば、同社の従業員の約64%が男性、約35%が女性であった。

 今後、Accentureは引き続き企業ポリシーを見直し、「当社のビジネス戦略を支援し、効果的で包括的であり、全従業員のニーズに適合し、世界各国の適用法令を順守し、変化する環境に対応できるようにする」方針を示している。

 また、特定の人口層向けキャリア開発プログラムを終了する一方で、「基幹となるキャリア開発プログラムへの投資を増やす」方針も打ち出した。さらに、外部の多様性ベンチマーク調査への参加を一時停止し、その継続的な参加の是非や外部パートナーシップの在り方も再評価するとしている。

 ただし、ITサービス企業であるアクセンチュアは、外部調査への参加を取りやめるものの、現在公開している市場ごとの従業員構成データの公表は継続すると述べた。さらに、従業員リソースグループ(ERG)への支援や、グローバルな給与の公平性への取り組みも引き続き推進する方針を示した。

 スウィート氏は、「異なる背景、視点、経験を持つ人材を採用・育成することは、イノベーションの推進と、多様な業界におけるグローバル企業へのサービス提供に不可欠であると常に考えている」と述べた。

広がるDEI撤退の動き

 スウィート氏のメモで示された「包括性への重点化」は、先週、元米国平等雇用機会委員会(EEOC)の民主党系コミッショナーであるチャイ・フェルドブルム氏がSNSのLinkedInへの投稿で示した提言と一致している。フェルドブルム氏は、ボンディ司法長官の命令が過度に拡大解釈されると「法廷で問題になる可能性がある」と指摘しつつ、企業がDEIプログラムを「公平で差別のない職場環境を実現するための取り組み」として再定義することを推奨した。

 2025年の年初以来、業界を問わず多くの企業がDEI方針を変更しており、米マクドナルド、Meta、Amazon、Target、Googleなども、多様性採用目標やサプライヤー多様性目標の縮小を進めている。多くの企業が、これらのDEI施策の終了に伴い、「包括性」(インクルージョン)への重点シフトを強調する傾向にある。

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