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物流業界における「2024年問題」が顕在化している。この問題を克服するためには物流業の生産性向上以外の道はない。ロジスティクス・コンサルタントの仙石惠一が、運送業はもちろん、間接的に物流に携わる読者に向けて基本からノウハウを解説する。
前回の連載記事では、「それ『偽装請負』じゃない? 物流工場のアウトソースを点検する方法」と題し、物流工場における業務の外部委託について誤った認識を持っていると、下請法違反となる可能性があることを解説した。
今回もアウトソースに焦点を当て、工場管理者が物流業務のアウトソースを成功させるための正しいステップを見ていきたい。
物流業務のアウトソースを検討する第一歩として、自工場で抱える物流業務の整理から始めてみよう。物流業務とはその名の通り、ものの流れに関する業務ととらえることが自然である。そこで工場にものが入ってから出ていくまでの流れに沿って業務を整理してみる。
まずは資材や部品の調達業務である。
一般的に資材や部品はトラックで輸送されて工場に納入される。このトラックの手配を自工場で行っている場合には、その手配業務、そして実輸送業務がアウトソースの対象業務になるだろう。
そして納入された資材や部品は納入検査を受けた後、いったん資材・部品倉庫で保管される。この間の運搬や倉庫への入庫、出庫そして在庫管理業務、品質管理業務が発生する。
生産に必要なタイミングを迎えると、倉庫から生産ラインへ資材・部品を供給する。同時に生産指示情報(かんばんやラベル)と完成品用容器を供給する。そして製品が完成するタイミングで生産ラインへの引き取り業務が発生する。
完成品はいったん保管エリアで保管されるとともにそこで在庫管理が必要になる。完成品は必要なタイミングで出荷場に荷揃(にぞろ)えされる。この時に出荷指示リストが作成され、それに基づいて荷揃えされることが一般的だろう。
荷揃えされた完成品は客先へと輸送されるが、そのための配車手配業務があり、実輸送が発生する。この一連の業務の間に容器数量管理や実容器の保管やメンテナンス業務があり、フォークリフトやトラックの点検・整備業務も発生している。大体工場で行われている物流業務のアウトラインはこういったところではないだろうか。
ここで注意すべきポイントは、物流業務を供給や輸送などの実作業と、在庫管理や配車手配などの管理業務に分けて両者ともに漏れのないように把握することである。そしてもしシステムを使っているのであれば「配車管理システム」や「容器管理システム」といったようにシステム名称単位で洗い出しておこう。
自工場で発生している業務の洗い出しが終わったところで今度はそれぞれの業務について具体的にどのような作業をどのような手順で、そしてどのような頻度で行っているのかについて正確に把握していこう。
標準作業書があればそれを使うことでこの過程は終了である。ただし標準作業書に書かれていない業務があればそれをきちんと整理しておくことが重要だ。なぜならこの発生業務の把握が後々アウトソースする際の「仕様書」につながるからである。
よく物流業務をアウトソースした会社から「アウトソースしたものの、期待したほどの効果がなかった」との嘆きの声が聞こえてくることがある。しかし実際にはアウトソース先に業務の内容をしっかりと伝えていなかったことが原因として考えられるのである。アウトソースを成功させるためには非常に大切なポイントなので、じっくりと時間をかけて発生業務の把握を行っておきたい。
それ「偽装請負」じゃない? 物流工場のアウトソースを点検する方法
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