その外注、本当に必要？ 物流現場の“アウトソース”を見直すべき理由：仙石惠一の物流改革論（1/2 ページ）

[仙石惠一，ITmedia]

連載：仙石惠一の物流改革論

物流業界における「2024年問題」が顕在化している。この問題を克服するためには物流業の生産性向上以外の道はない。ロジスティクス・コンサルタントの仙石惠一が、運送業はもちろん、間接的に物流に携わる読者に向けて基本からノウハウを解説する。

　どこの工場でも多かれ少なかれ物流業務を外部の企業にアウトソースしているのではないだろうか。仮に今アウトソースしていなくても、本業に特化するために今後アウトソースを検討している工場もあるだろう。

　しかし、今のアウトソースは果たして「もうかって」いるといえるだろうか？　一つだけ確実に言えることは、物流業務の業者への丸投げは危険だということである。実際には考えもしなかったコストを支払っているケースも多々見受けられるからである。

　今回から、委託先の管理ポイントを明確にするとともに、工場管理者の方がちょっとした工夫をすることで、「もうかる」アウトソースを成功させる秘訣を紹介していく。工場コスト削減の余地がまだあることを認識していただくきっかけになるものと信じている。

物流業務を外部の企業にアウトソースしていかに「もうけ」を生み出すか。写真はイメージ（ゲッティイメージズ）

著者プロフィール：仙石　惠一（せんごく・けいいち）　

合同会社Kein物流改善研究所代表社員。物流改革請負人。ロジスティクス・コンサルタント。物流専門の社会保険労務士。

1982年大手自動車会社入社。生産管理、物流管理、購買管理を担当。物流Ierの経験を生かし荷主企業や８物流企業の改善支援、各種セミナー、執筆活動を実施。

著書『みるみる効果が上がる！製造業の輸送改善　物流コストを30％削減』（日刊工業新聞社）『業界別　物流管理とSCMの実践（共著）』（ミネルバ書房）

その他連載多数。

アウトソースのきっかけと注意点

　皆さんが物流業務をアウトソースしようとしたきっかけは何だろうか。

　まず工場にとっての物流は本業か否かという論議があるのではないだろうか。資材の調達から生産、出荷、販売といったサプライチェーンの管理そのものを物流業務ととらえるマクロの視点と、輸送や保管、工場内運搬といったミクロの視点でとらえる視点によって判断が分かれるかもしれない。

　前者の場合は会社全体の重要機能、つまり本業として社内でコントロールすることが一般的だろう。一方で後者の場合、それはものづくりの観点からは本業とは判断されずアウトソースの対象となる傾向が多いかもしれない。

物流アウトソーシングの期待値（筆者作成、以下同）

　ここでありがちな、危険な考え方がある。アウトソースする際、「物流は会社にとって本業ではないから、全てプロに任せよう」というものだ。プロに任せるという発想自体は間違っていないが、相手が本当にプロであることを見極められているだろうか？

　もう一つの注意点は相手に対する“任せ方”である。どの仕事をどのように実施してほしいのか？　これを正確に伝えておかないと当初思っていたことと異なる結果を後々招きかねない。委託先に自分たちの思いを正確に伝えきれずに始めたアウトソースや、委託先のパフォーマンスをきちんと管理できていない実態の見えない丸投げアウトソースは失敗する確率が極めて高い。

　笑い話ではないがアウトソースが失敗していることにすら気付かない場合もあるのだ。なぜならそのアウトソースの成功・失敗の判断基準があいまいだからである。