コストコのDEI施策堅持の姿勢は、他の企業にも影響を及ぼしています。例えば、アップルやマリオット・インターナショナルなどの企業も、コストコに続き、DEIプログラムの維持を表明しています。これらの企業もまた、多様性がイノベーションや競争力の源泉であると認識し、DEI施策が会社の成長のために重要であると表明しています。
一方で、コストコと同じ小売企業では先述のとおり、ウォルマートやターゲットなど、DEIプログラムを縮小・廃止する企業も出てきています。このように、米リテール業界におけるDEI施策に対する対応は、企業ごとに分かれています。それぞれ具体的に見ていきましょう。
ウォルマートは、2020年にジョージ・フロイド事件(※)を受けて「Center for Racial Equity」(人種平等センター)を設立し、1億ドル(約150億円)を投じて人種間の不平等是正に取り組んできました。このセンターは、教育、健康、金融、刑事司法の4つの分野での改革を目指していました。
※黒人男性ジョージ・フロイドさんが米ミネアポリスで白人警官に取り押さえられ死亡した事件
しかし、2024年11月、ウォルマートはDEIプログラムの一部を縮小する方針を発表しました。具体的には、以下の取り組みが見直しの対象となりました。
設立から約4年で、同センターへの資金提供を終了することを決定
女性、マイノリティ、退役軍人、LGBTQ所有のビジネスを支援するプログラムを段階的に廃止する計画を表明
従業員向けの人種平等に関する研修を打ち切る方針を示す
これらの決定の背景には、保守派活動家からの圧力がありました。特に、活動家のロビー・スターバック氏は、ウォルマートのDEI施策が「過度に政治的」であると批判し、顧客のボイコットを呼びかけるなどの行動を取っていました。
ウォルマートは、これらの施策の見直しについて、「従業員や顧客の多様なニーズに応じて進化する」ことを目指していると述べています。しかし、これらの動きは、同社がDEI施策に対するコミットメントを後退させているとの批判も招いています。
ターゲットもまた、DEI推進に積極的な企業として知られており、特にアフリカ系アメリカ人の従業員や顧客を支援するためのプログラムを展開してきました。しかし、近年の政治的・社会的な圧力により、同社のDEI施策にも変化が見られます。
2024年、ターゲットは以下のようなDEI施策の見直しを行う方針を示しました。
ターゲットはDEI施策の見直しについて、「企業としての社会的責任とビジネス上の現実とのバランスを取る必要がある」と述べています。
これらの動きは、ターゲットがこれまで築いてきた多様性重視のブランドイメージに影響を及ぼす可能性があり、同社の今後の戦略に注目が集まっています。
ウォルマートとターゲットのDEI施策の見直しは、米国の小売業界全体に波紋を広げており、他の企業の動向にも影響を与えると考えられます。各社は、社会的責任とビジネス上の現実との間で、どのようにバランスを取るかが問われています。
米コストコが「反・多様性」に堂々と“NO”を突き付ける理由Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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