上述3つ目の役割にも記載したが、ジークアクスの最大の特徴は既存作品のIFシナリオという点である。
宇宙世紀0079年、地球連邦軍とジオン公国軍の間で繰り広げられた一年戦争——ガンダムシリーズの原点であるこの事象が、ある分岐点を境に大きく異なる道をたどったらどうなるか、本作が多くのファンに衝撃を与えた最大の要因である。
なお、歴史×IFシナリオは古の時代より親しまれているジャンル・技法であり、この手法自体に希少性はない。
特筆すべきは、スピンオフはあれど「史実」しか描かれていなかった宇宙世紀の一年戦争において、IFを投げかけた点である。本作における最大の衝撃、シャア・アズナブルが赤いガンダムに搭乗することを提案したスタジオカラーの庵野秀明氏も下記のように語っている。
『GQuuuuuuX-Beginning-』の冒頭は、再現度の強さと、特別にスタッフのエネルギー熱量が高かった為、驚かれるかもしれない映像に仕上がっていますが、本質は、「ガンダム」シリーズという広大な敷地に我々が建てさせていただいた、新たな一棟に過ぎないと考えています。
本家住宅の解体や増築ではなく、横並びに別棟を建てたイメージで考えています。
「機動戦士ガンダム」という巨大なコンテンツ・IPと関わらせていただく以上、我々も「ガンダム」の更なる再生と拡張、より多くのお客様に見ていただける作品を目指すべきで、既成のそれとは違う切口での新たな路線開拓を試みるべきではないか。
そう考え、前日譚部分を、ある程度の尺を使って描く事を、鶴巻監督へ持ちかけました。
前日譚が前日譚としてそのまま流れる構成の「劇場先行版」をお楽しみ頂けると、幸いです。よろしくお願いします。
このような長寿シリーズ×IFシナリオという取り組みは、タイトルは認知されているものの、長寿が故に既存コンテンツが多すぎ、新規層が入口を見つけにくい、という状況を打破する一つの手法となりえるだろう。
日本アニメの例では、鳥山明氏の漫画を原典とし、さまざまなストーリーが追加されているドラゴンボールが近しい試みといえるかもしれない。
もっとも、マーベルシリーズのアメコミのように新解釈・新ストーリーが乱立するのは日本市場に適していないだろう。サンライズ、そしてスタジオカラーによる絶妙なバランス感覚があってこそ、成立した歴史的な試みだ。
4月の本放送を前に既に日本のアニメ史に新たな足跡を残しつつある『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』。この前例なき挑戦が今後どのような展開を見せるのか、アニメというコンテンツに関心を持つ全ての人々の視線が、この作品に注がれている。
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