金融・Fintechジャーナリスト。2000年よりWebメディア運営に従事し、アイティメディア社にて複数媒体の創刊編集長を務めたほか、ビジネスメディアやねとらぼなどの創刊に携わる。2023年に独立し、ネット証券やネット銀行、仮想通貨業界などのネット金融のほか、Fintech業界の取材を続けている。
「これからはギガもメルカリ」――。3月4日、メルカリがMVNO(仮想移動体通信事業者)に参入し、モバイルサービス「メルカリモバイル」の提供を開始した。ドコモ回線を利用したこのサービスが掲げる最大の特徴は、データ通信量(ギガ)を個人間で売買できる日本初の機能だ。
ギガが余るなら売る、足りなければ買う。一見シンプルに見えるこの仕組みだが、仕組みをよくよく見てみると、思いの外複雑さが見えてくる。携帯料金の自由化と簡素化を目指すメルカリだが、このサービスは果たして狙い通りユーザーの心をつかめるのだろうか。
メルカリがモバイル市場に参入した背景には、業界の構造変化がある。ドコモ、au、ソフトバンクの3大キャリアのシェアが徐々に縮小し、ahamoなどのサブブランドやMVNO事業者の存在感が増してきた。この流れはさらに加速するとメルカリは読む。
メルカリモバイルが価格競争の主戦場に踏み込まない点は、業界動向からするとユニークだ。月額990円(2GB)、2390円(20GB)というプランは、競合他社より割高感がある。業界は全体として値下げと大容量化に動いており、大手MVNOのIIJmioでも、3月に5GBを990円から950円に、20GBを2000円のまま25GBへと実質値下げしたばかりだ。
メルカリの視線の先にあるのは、価格よりも使い勝手を重視する「カジュアル層」である。メルカリの調査によれば、キャリア変更の経験がない、もしくは1回のみの消費者は全体の64.4%に上る。乗り換えないトップの理由が「手続きが面倒」というのだから、ここに商機があると踏んだのだろう。
「申し込みから支払いまでメルカリで完結することで、これまでキャリアを変更したことがない方でも簡単に試せる」。同社執行役員CEO Fintech兼MVNO事業責任者の永沢岳志氏はこう語る。
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