長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。
福岡発祥のディスカウントスーパー「トライアル」を経営する、トライアルホールディングス(HD)が、大手スーパーの西友を3800億円で買収すると発表した。実際の株式取得は、7月1日の予定で、西友はトライアルHDの完全子会社となる。トライアルHDは2024年3月に東証グロース市場へ上場したばかり。ディスカウントスーパーとして新興に属する企業が、実績十分の老舗を飲み込んだ意外性で、話題になっている。
トライアルは、郊外で駐車場付き、売場面積1500坪前後を標準とし、かつ24時間営業の店舗を構える方式で成長している。2024年6月期の連結決算では、売上高7179億円(前年同期比9.9%増)となっており、成熟産業のスーパーマーケット業界にありながら、数少ない伸び盛りの企業だ。しかも、増収は24期連続となる。
現在、都内こそ店舗がないものの、隣接する各県にはあり、多くが街はずれの幹線道路沿いで営業している。2025年2月現在で343店を展開する。
同じ九州地盤の安価なチェーンとしては、業種こそ異なるがドラッグストア大手のコスモス薬品が展開する「ディスカウント ドラッグ コスモス」と双璧とされている。物価高の現在、庶民にとってありがたい存在といえる。
トライアルHDはITを駆使したローコスト運営に長けており、自社で構築した物流網で中間流通マージンを省き、圧倒的な低価格を実現している。一方の西友は、かつてカリスマ経営者の堤清二氏が率いるセゾングループの中核として、成熟社会の消費者に値段相応の価値を提供する「質販店」を目指した歴史がある。
バブル崩壊によってセゾングループが解体する中、2002年に米国・ウォルマートと包括的業務提携を結び、2008年には完全子会社となった。その後、米国投資会社のKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)と楽天DXソリューションが主たる株主となった。現在は楽天DXソリューションが離脱し、KKRが85%、ウォルマートが15%の株式を保有している。西友の店舗数は2024年11月現在で242。2024年12月期の売上高は4835億円だ。
トライアルは西友をM&Aすることで年商が1兆円を超える、巨大流通グループとなる。国内ではセブン&アイ・HD、イオン、ファーストリテイリング、パン・パシフィック・インターナショナルHD、ヤマダHDに次ぐ6番目となる。
そこで今回は、トライアルの西友買収のインパクトについて、論じていきたい。
24期連続増収のスーパー「トライアル」 安さだけではない、納得の成長理由
一番人気の「かつ重」は300円未満! スーパー・トライアルが物価高時代に「安さ」で勝負できるワケCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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