絶好調「オーケー」を倒せるか トライアル&西友タッグが秘めている巨大な可能性長浜淳之介のトレンドアンテナ(1/5 ページ)

» 2025年03月31日 13時45分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

著者プロフィール

長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)

兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。


 福岡発祥のディスカウントスーパー「トライアル」を経営する、トライアルホールディングス(HD)が、大手スーパーの西友を3800億円で買収すると発表した。実際の株式取得は、7月1日の予定で、西友はトライアルHDの完全子会社となる。トライアルHDは2024年3月に東証グロース市場へ上場したばかり。ディスカウントスーパーとして新興に属する企業が、実績十分の老舗を飲み込んだ意外性で、話題になっている。

勢いがある「トライアル」(筆者撮影)

 トライアルは、郊外で駐車場付き、売場面積1500坪前後を標準とし、かつ24時間営業の店舗を構える方式で成長している。2024年6月期の連結決算では、売上高7179億円(前年同期比9.9%増)となっており、成熟産業のスーパーマーケット業界にありながら、数少ない伸び盛りの企業だ。しかも、増収は24期連続となる。

 現在、都内こそ店舗がないものの、隣接する各県にはあり、多くが街はずれの幹線道路沿いで営業している。2025年2月現在で343店を展開する。

トライアル騎西店、スキップカート非導入
駐車場はとても広い

 同じ九州地盤の安価なチェーンとしては、業種こそ異なるがドラッグストア大手のコスモス薬品が展開する「ディスカウント ドラッグ コスモス」と双璧とされている。物価高の現在、庶民にとってありがたい存在といえる。

コスモスの店舗、北本本宿店(埼玉県北本市)

 トライアルHDはITを駆使したローコスト運営に長けており、自社で構築した物流網で中間流通マージンを省き、圧倒的な低価格を実現している。一方の西友は、かつてカリスマ経営者の堤清二氏が率いるセゾングループの中核として、成熟社会の消費者に値段相応の価値を提供する「質販店」を目指した歴史がある。

 バブル崩壊によってセゾングループが解体する中、2002年に米国・ウォルマートと包括的業務提携を結び、2008年には完全子会社となった。その後、米国投資会社のKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)と楽天DXソリューションが主たる株主となった。現在は楽天DXソリューションが離脱し、KKRが85%、ウォルマートが15%の株式を保有している。西友の店舗数は2024年11月現在で242。2024年12月期の売上高は4835億円だ。

 トライアルは西友をM&Aすることで年商が1兆円を超える、巨大流通グループとなる。国内ではセブン&アイ・HD、イオン、ファーストリテイリング、パン・パシフィック・インターナショナルHD、ヤマダHDに次ぐ6番目となる。

 そこで今回は、トライアルの西友買収のインパクトについて、論じていきたい。

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