トライアルが西友を子会社にすることで、規模の拡大にとどまらないメリットを享受できるはずだ。もともとトライアルは「世界最強」のスーパー・ウォルマートを目標に、IT活用を含めた店づくりを行ってきた。西友は一時期、まさにウォルマート・ジャパンだったわけで、人材や店舗、システムを通して、ウォルマートのノウハウを学べる。
「日本から撤退したのだから、ウォルマートは失敗したではないか」という反論もあるだろう。しかし、西友の売上高営業利益率は4.9%もあり、スーパーとしては相当高い。ところが、西友はウォルマート傘下にあった頃は決算を公表していなかった。
高収益を生み出す仕組みは、果たしてウォルマートに起因するのか。それともKKRや楽天が参画した時に社長に就任した、ユニクロや無印良品の業革で実績のある大久保恒夫氏が改善したのか。真相を解明し、かつ経営に生かせる権利を、トライアル経営陣は手にした。
しかも、トライアルと西友は、店舗の分布で見事に住み分けできている。
トライアルは近年、福岡県内に「トライアルGO」という小型店を実験的に出しているものの、本来は郊外の幹線道路にある大型のスーパーセンターがスタンダードだ。中には売場面積が2000坪以上ある、メガセンターと呼ばれる店もある。
一方の西友は、駅前の一等地にGMS(総合スーパー)を経営してきた実績がある。近年は地方の店を閉めて、首都圏に集中しており、商品も食品に絞ってきた。ちょうど、トライアルが出店してこなかった首都圏近郊の駅前店舗を、買収によって物流網ごと手中に収めることになる。これは大きい。
西友は全国的に知名度が高いビッグブランドなので、当面2ブランド体制で経営する方針だ。AIカメラ、スキップカートといったDX関連のシステムは西友に導入していくのだろう。明治屋が活躍する機会も増えそうだ。
トライアルGOは今後首都圏に進出して、同じ商圏でも平日は近所の衛星店トライアルGOで日常の品を買い、休日は母店の西友でちょっと良いものを買うという住み分けも想像しやすい。競合では、イオンが平日は暮らしに密着した「そよら」を使ってもらい、休日はエンタメ性が高い「イオンモール」で楽しんでもらう使い分けを提唱し、成果が出ている。
同様の効果が、もっと小さい商圏で成立したら面白い。首都圏で2ブランド体制を確立すれば、全国の100万都市、県庁所在地クラスの中心都市に拡大できる。その過程でM&Aを駆使すれば、結果的に小売再編の台風の目になるだろう。
【2025年3月31日午後1時45分の初出で、トライアルGOに関する記述に間違いがあったので修正しました】
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