新入社員に「主体性を持て!」は意味がない 人が自然に動く「タスク管理」の手法「キレイごとナシ」のマネジメント論(4/5 ページ)

» 2025年04月08日 08時00分 公開
[横山信弘ITmedia]

タスク分解、3つの手順とは?

 主体性を育てるには「タスク管理」から始めるべきだと書いた。ではタスク管理の第一歩である「タスク分解」はどうすればいいのか? 3つの手順を紹介しよう。

まずは「最終ゴール」を明確にする

 タスク分解の第一歩は、最終的なゴールを明確にすることだ。例えば「企画書を作る」といった漠然としたゴールではなく、「○月○日までに、A4サイズ10ページ以内、図表3つ以上を含む新商品企画書を完成させる」といった具体的なゴールを設定する。

 先日ある製造業の営業部長からこんな相談を受けた。

 「社長から『来期の戦略を考えろ』と言われたのですが、どこから手をつけていいか……」

 私は最初に「戦略とは具体的にどんなアウトプットでしょうか?」と尋ねた。すると部長は立ち止まり、考え込んだ。

 「確かにそうですね。考えても分からないので、直接社長に聞いてみます」

 社長に確認したところ「来期の営業予算と、その達成のためのアクションプランが欲しい」という答えが返ってきた。これで具体的なゴールが見えてきたのだ。

ゴールから「逆算」して作業を洗い出す

 次にゴールから逆算して必要な作業を洗い出していく。これを「バックワード・プランニング」と呼ぶ。

ゴールから逆算する

 先ほどの営業部長の例なら、「予算を立てるには過去3年間の売り上げデータが必要」「アクションプランには具体的な営業活動のリストが必要」といった具合だ。

 私がおススメするのは、マインドマップを使いながら作業を発散させていく方法だ。真ん中のセントラルイメージに「来期の戦略」と書き、必要な作業をテーマごとにブランチを描いていく。そのブランチごとに、ドンドン枝を伸ばしていけば自然とアイデアは発散されていくだろう。PCのアプリを使えば、作業の追加や順序の入れ替えが容易なのでおススメだ。

各作業の「所要時間」と「期限」を設定する

 最後に、洗い出した各作業に対して所要時間と期限を設定する。所要時間が測れるものはタスク、そうでないものはプロジェクトと認識する。そしてプロジェクトはタスクの集合体だから、さらに所要時間が見積もれるほどにタスク分解していこう。この際、必ず「余裕」を持たせることがポイントだ。

 あるIT企業のプロジェクトリーダーは、こんな工夫をしていた。彼は各作業の見積もり時間を1.5倍に設定していたのだ。

 「最初から余裕を持たせておくことで、想定外の事態にも対応できます。また、前倒しで完了すれば、チームの士気も上がりますしね」

 この手法を取り入れたことで、プロジェクトの納期遅延は大幅に減少したという。

分解したタスクの「処理」方法

 タスクを分解したら、次は適切に処理・管理していく必要がある。ここでは特に、メモを活用した管理方法を紹介しよう。

 私がクライアント企業で最もよく提案しているのが「重要―緊急マトリクス」だ。これはA4用紙やノートを4つに区切り、次のようにタスクを仕分けする方法である。仕分けしたら番号の順に処理していく。

  1. 左上:緊急かつ重要
  2. 右上:重要だが緊急ではない
  3. 左下:緊急だが重要ではない
  4. 右下:緊急でも重要でもない

 このマトリクス図を用いると頭が整理される。意外と(2)よりも(3)を優先的に手を付けてしまう人は多い。目先の仕事に振り回されるタイプの人だ。いったん視座を上げるために、このようなマトリクス図はとても役に立つ。

 この方法を取り入れた中堅商社の課長は、こう語った。

 「以前は『今すぐやるべきこと』と『後でもいいこと』の区別がつかず、いつも目の前の雑務に追われていました。この方法を使いはじめてからは、重要な案件に時間を割けるようになりました」

 実践する際の重要ポイントは、常にメモを携帯して随時更新することだ。私自身も小さなメモ帳を常に持ち歩き、思い付いたタスクをすぐに書き込む習慣がある。

 処理すべきタスクの優先順位ができたら、「タイムボクシング」という手法で具体的“時間の枠”をとろう。処理時間が30分のタスクがあるなら、自分のスケジュールの中に30分の枠をとるのだ。このようにドンドン分解されたタスクに時間の枠を当てはめていく。そしてそのスケジュールに従ってタスクの処理に集中するのだ。

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