帝国データバンク(東京都千代田区)は4日、2024年度の人手不足倒産の動向調査を発表した。人手不足を主因とする倒産件数が350件に達し、統計開始以来の最多記録を更新したと発表した。前年度と比較すると15%の増加となり、特に中小企業での人材確保の困難さが浮き彫りとなった。
調査によると、建設業が111件と全体の3割を占め、業種別で最多を記録した。これは前年度の94件から17件の増加となり、業界として初めて100件の大台を突破した。物流業は建設業に次ぎ42件を記録した。前年度の46件から4件の減少だが、依然として高い水準で推移している。両業種とも以前から深刻な人手不足による倒産が多発し、2024年問題により、経営環境はさらに厳しさを増した。
大手企業の採用強化で「初任給30万円時代」が到来し、賃上げの機運がさらに高まりを見せている。待遇改善の動きにより転職市場が大きく活性化し、業界全体で人材獲得競争が一層激化している。特に若手人材の獲得において、企業間の給与水準引き上げ競争が加速する傾向にある。こうした状況下で、賃上げの余力が限られている小規模事業者は人件費の上昇が難しいのが現状だ。
賃上げ原資を確保するには価格転嫁が必須だが、多くの企業がその実現に苦慮している。全業種平均の価格転嫁率は40.6%にとどまる。建設業では39.6%、物流業では32.6%と低水準で推移している。これらの業界では、原材料費や燃料費の高騰、人件費の上昇が重なり、収益構造を圧迫している。2022年の調査開始以降、価格転嫁率は緩やかな上昇傾向にあるものの、依然として十分な転嫁を実現できない企業が多い。厳しい経営環境が続いている。
取引先との価格交渉では、物価上昇によるコスト増加分の価格転嫁については比較的理解が得られやすい一方、従業員の待遇改善や賃上げのための価格転嫁に対しては、取引先が慎重な姿勢を示すケースが増えている。特に大企業と中小企業間の取引ではこの傾向が顕著。価格転嫁から賃上げに転じる好循環の実現は、企業の存続と雇用維持に直結する重要課題だ。今後の人手不足倒産の発生状況や業界構造の変化を占う、重要な指標の一つとなっている。
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