リテール大革命

物流業務のアウトソーサー選定、なぜ失敗する? 失敗しないための評価基準を紹介仙石惠一の物流改革論(1/2 ページ)

» 2025年04月17日 07時00分 公開
[仙石惠一ITmedia]

連載:仙石惠一の物流改革論

物流業界における「2024年問題」が顕在化している。この問題を克服するためには物流業の生産性向上以外の道はない。ロジスティクス・コンサルタントの仙石惠一が、運送業はもちろん、間接的に物流に携わる読者に向けて基本からノウハウを解説する。

 本連載では直近、物流業務のコスト削減や効率化を目指し、外部の企業に一部業務をアウトソース(委託)するための正しいステップについて確認。前回は、物流アウトソースの成否を握るカギとも言える「仕様書」に盛り込むべき項目を解説した。

 今回は、公平公正なアウトソース先の選定方法について見ていきたい。

 委託先の候補会社から見積書が出そろったところで、最終的な委託先の選定プロセスに入ることになる。この選定条件についてはあらかじめ定めておく必要がある。

 では、どのような条件を定めたらよいだろうか。順に見ていこう。

物流業務のアウトソース先をどう選定すればいいか? 評価基準を解説する。写真はイメージ(ゲッティイメージズ)

著者プロフィール:仙石 惠一(せんごく・けいいち) 

photo

合同会社Kein物流改善研究所代表社員。物流改革請負人。ロジスティクス・コンサルタント。物流専門の社会保険労務士。

1982年大手自動車会社入社。生産管理、物流管理、購買管理を担当。物流Ierの経験を生かし荷主企業や8物流企業の改善支援、各種セミナー、執筆活動を実施。

著書『みるみる効果が上がる!製造業の輸送改善 物流コストを30%削減』(日刊工業新聞社)『業界別 物流管理とSCMの実践(共著)』(ミネルバ書房)

その他連載多数。

アウトソース先の選定条件

 選定要素は4つある。1つ目は価格である。提示された価格が自社の期待する水準であるかどうかがポイントとなる。

 2つ目が技術的要件である。自社の物流を請け負ってもらうに十分な物流技術力を兼ね備えているかどうかをチェックしよう。

 一例として、倉庫における保管と入出庫業務を発注する場合、倉庫の地理的位置や規模、荷役時の雨天対策や安全確保などが自社の要求水準に見合っているかどうかをチェックし、判断する必要がある。輸送業務では協力会社を含めたトラック台数などの輸送能力が繁忙期にも対応できるかどうかは重要なポイントとなる。技術力には物流作業者の能力、現場管理力なども評価対象になるだろう。

 3つ目は委託先の物流現場の状況である。委託先の現場の実態について評価表を使って判断すればよいだろう。

委託先の現場の実態について評価表を使って判断する(筆者作成)

 4つ目は改善提案力である。長く付き合っていくためには、その間でプロの観点からいろいろな改善アイデアを出してもらい、物流品質向上や効率化に寄与してほしいところである。そこでどのような改善提案ができるのか、どれくらいの件数提案してもらえるのかなどについて確認しておきたい。この4つを総合して委託先を決定しよう。

アウトソース先選定に失敗してしまうケース

 よくある失敗パターンとして「価格のみで選定」した案件を見かける。

 安い価格に思わず飛びついて発注したものの、実際に始めてみたら、委託先が受注業務をうまく運用できずに物流がストップしてしまった――というような事例である。

 このような「安かろう悪かろう」的な発注は禁物である。「ハネムーン価格」に騙されてはならない。前回解説したように委託先訪問を実施し、その会社の実力を自分たちの目で見て判断しなければならない。最終的には4つの要素を重みづけした点数のトータル値で判断することになる。

4つの要素を重みづけした点数のトータル値で判断する(筆者作成)

 それぞれの点数についても基準を設定しておく。例えば、全ての物流技術仕様を満たしていれば何点で、それに倉庫の使い勝手や物流作業者の技能レベルなどの条件で加減点をしていくようなルールを決めておきたい。

 価格についても各社の順位に応じた得点や期待値の達成度合いに応じた加減点をしていく。改善点についても自社のニーズに見合った提案や自社では思いもよらなかった提案などに応じた点数基準を決めておけばよいだろう。このような基準をあらかじめ定めておくことで、担当者による恣意(しい)性を排除し、公平公正な選定を可能とするのだ。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アイティメディアからのお知らせ

SaaS最新情報 by ITセレクトPR
あなたにおすすめの記事PR