リテール大革命

AIで「コスト削減」から「売上拡大」へ──日立×電通Gが協働、次に“来る”AIの姿とは?

» 2025年04月25日 11時00分 公開
[ITmedia]

 AIはコスト削減や生産性向上のためだけに使うものではなくなり、「売上拡大」の役割が求められるようになる──。

 そんな未来を見据え、日立製作所、電通、電通デジタルの3社が協働を始める。「生活者に寄り添った」生成AIサービスを検討・提供するプロジェクト「AI for EVERY」を立ち上げ、共同で取り組む。どのようなサービスを提供するのか?

日立製作所×電通グループ どんなサービスを提供?

 ビジネスシーンにおいて、2023年から話題の中心であり続けている生成AI。日立製作所 AI CoE GenerativeAIセンター 本部長の吉田順氏は、現状を「コスト削減の事例が多い」と指摘する。同社でも人手不足への対応としてコスト削減、生産性向上に取り組んでおり、それらも重要なテーマと捉えている一方で「『減らしたコストを使って売り上げを上げたい(トップラインを拡大したい)』というニーズは、今後どんどん増える」とみている。

 「トップラインを拡大しようと思った時に、例えばマーケティング用のコンテンツ作成や、金融機関や流通小売業でAIコンシェルジュを置くなど、顧客体験を上げ、パーソナライズするという領域に入っていく。当社は工数削減は得意でも、トップライン拡大はなかなか難しい側面があり、今回の取り組みを一緒にしたいと考えた」(吉田氏)

 3社の協働プロジェクト「AI for EVERY」は、日立製作所が重視する社会課題解決の視点と、電通グループが把握している生活者データや動向をかけ合わせる取り組みだ。例えばショップの店員が集まらないとき、日立は人手不足という社会課題解決のためのアプローチを取る。同時に、電通グループはトップライン拡大のために利用者の心情面からできることを考える──そんなイメージだという。

photo AI for EVERYにおける3社の役割(プレスリリースより、以下同)

 構想中のプロダクトの一つが「今日の気まぐレシピ」。フードロスという社会課題に対し、店頭やWebでその日のおすすめレシピを表示することで対応していくというものだ。

photo 店頭やWebでその日のおすすめレシピを表示する「今日の気まぐレシピ」

 具体的には、需要予測や受発注、在庫管理などの日立が提供するシステムから、生活者情報を基にレシピを生成するAIにフードロス情報を共有する。作成されたレシピ情報は、電通グループが持つ広告の制作ノウハウを反映させた∞AI(ムゲンエーアイ)に送られ、レシピの完成イメージや、生活者の関心を引くレシピ名、コピーなどが生成される。

photo 「今日の気まぐレシピ」のフロー図

 電通グループ グロースオフィサーの並河進氏は「“なかった需要”を創造するような体験の設計を電通グループのクリエイターが行う」ことを、今回の取り組みの強みとして挙げる。「小売の事業者と連携しながらキャンペーンとして打ち出していける。競争優位性を作っていけるのでは」と電通デジタル CAIOの山本覚氏も話す。

 「気まぐレシピ」にこだわらず、年内に新サービスを提供することを最初の目標として設定。流通・小売業や金融など、対面のやりとりが発生する業界との親和性が高いと見込む。

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