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「公益通報」と「ハラスメント」、企業は相談窓口を分けるべき 線引きの理由を解説(3/3 ページ)

» 2025年04月30日 08時30分 公開
[佐藤敦規ITmedia]
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ハラスメント対策の窓口と同じにしてよいのか?

 これから公益通報保護の窓口を設置する場合、ハラスメントの相談窓口とのすみ分けについて悩む企業もあるのではないでしょうか。パワハラ、セクハラ、カスハラなど各種ハラスメントへの対応は、企業にとって重要な問題です。実際、社会保険労務士である筆者に寄せられる相談も、日々増えています。

 1000人以上の大企業であれば、人事部と法務部(コンプラアンス部)が独立して設けられ、ハラスメント関連の相談は人事部、公益通報については法務部が対応するという分担になっていると思われます。これに対して300人以上から1000人以上の中堅企業では、法務部がなかったり、人事部も独立した組織でなく総務人事部という形で存在したりすることも。ハラスメントと公益通報に対する窓口を分ける余裕がないため、1つにまとめようと考えている企業もあるかもしれません。

 公益通報もハラスメントも、従業員などから通報・相談を受け付けて事実関係を調査し、必要な措置を講じるという仕組みは共通しています。通報者や相談者を保護するために、不利益取り扱いの禁止や厳格な情報管理もしなければならないという点も同じです。こうしたことから窓口を共通化した方が効率的だと考える企業もあるでしょう。

 とはいえ、ハラスメントと公益通報では求められる対応は異なるため、可能な限り公益通報の窓口とハラスメントの窓口は分けた方がよいです。例えば、ハラスメントの中で最も多いといわれるパワハラについての相談は、上司からの直截的な暴言や暴力だけでなく、同僚などの人間関係の悩みや人事評価の不満などについて寄せられることもあります。職場の人間関係全般、すなわち人事部が対応すべき課題といえます。

 一方、公益通報は、企業の経営方針などにも関連するため、人事部では対応できない内容もあります。社内で対応できない場合は、弁護士事務所など外部の相談窓口を設けるのもよいでしょう。

tuho 提供:ゲッティイメージズ

就業規則に記載するべきか

 内部通報に関する規定を就業規則に定めている会社は少ないように思われます。就業規則に必ず載せなければならない内容ではありませんが、職場の秩序や従業員の権利に関わることです。301人以上の企業では載せた方がよいでしょう。

 載せる場合は、就業規則に全てを盛り込む必要はありません。下記のように、別規定として設けると運用しやすいですし、厚生労働省が公開しているモデル就業規則ではそのような体裁となっています。

〇〇条 会社は、労働者から組織的又は個人的な法令違反行為等に関する相談又は通報があった場合には、別に定めるところにより処理を行う

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