2024年10月の衆院選挙で、与野党は最低賃金1500円を目標に掲げました。石破茂首相は、最低賃金を全国加重平均で1500円に引き上げるという政府目標の達成時期を、従来の2030年代半ばから2020年代へと前倒しすると公表しています。
この方針が実現すれば、倒産する中小企業が続出するという悲観的な声も聞かれます。そんな中で、派遣社員の平均時給はすでに1500円超を記録しています(2024年6月時点)。
派遣社員というと、正社員と比べて雇用が不安定な上、収入面でも恵まれていない経済的な弱者というイメージを持つ人も多いのではないでしょうか? 今回は、派遣で働く人の時給が1500円を超えている理由や、それに伴う派遣会社の倒産の実態について解説します。
派遣社員の時給が高くなったのは、人手不足など労働力の需要と供給のバランスの影響もありますが、政府の施策による部分が大きいです。
2020年4月以降の同一労働同一賃金の施策の中で、派遣社員が派遣先企業の正社員と同じ仕事をしている場合は待遇も同じにしなければならないと定められました。さすがにこの指針は現実的でないという声が派遣業界から挙がったため、厚生労働省は、労使協定方式といって国が集計している職種ごとの賃金統計と同等以上の賃金を派遣社員に支給する方法も認めました。
現在では、約9割の派遣会社が労使協定方式を選択しています。使用されている賃金統計は、正社員を含めたもののため、最低賃金の水準よりも高めに設定されています。
その結果、派遣社員の賃金が急上昇したのです。エン・ジャパンの調査によれば、東京・名古屋・大阪の三大都市圏では2024年9月時点での平均時給は1700円を超え、最低平均賃金1500円に満たない職種は、介護系と軽作業系の2職種という結果となっています。
筆者は派遣会社の顧問をしており、その賃金台帳を見る機会があるのですが、大半の派遣社員の平均時給が1500円超です。
もちろん派遣社員の大半は有期契約のため、業績や会社の方針の変化などにより契約が更新されないことも多々あります。最近では無期雇用派遣といって月給制の雇用形態で働く人も現れましたが、派遣社員の大半は時給制で働いています。
したがって、年末年始などの休みが多い月は収入が減ります。また賞与が支給されない人が大半を占めますので、実態は数字ほど恵まれているとはいえないでしょう。とはいえ、パート社員などはもとより中小企業の正社員よりも時給換算すれば高い給料をもらっている派遣社員がいるのは事実です。
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