「銀行などの金融サービスの場合、日常的にアプリを開く機会は少ない。しかし、決済サービスの場合は、取引のたびにアプリを開くため、顧客とのタッチポイントが毎日のように生まれる」と、栗尾氏はPayPay金融グループが決済を軸にしていることの利点を、こう説明する。
タッチポイントの多さと頻度の高さは、他の金融サービスにはない強みだ。栗尾氏によれば、「決済時の入金も重要なタッチポイントとなる。この入金という“入口”をスムーズにし、その先の“出口”となるような金融サービスをきちんと用意できれば、ユーザーは自然と他のサービスにも関心を持ち、利用してくれるようになる」という考えが基本にある。
一方で、PayPayブランドの認知度調査では、「決済アプリ」としての認識が依然として強い。ジャパンネット銀行がPayPay銀行に名称変更した際も、銀行という堅いイメージの事業に、PayPayというカジュアルな名称がマッチせず、違和感を覚えたユーザーが多かった。このイメージからの脱却が重要になってくる。
そのため栗尾氏は、「PayPayブランドでNPS(顧客推奨度)を高め、資産を安心して預けられる会社として、地位を確立したい」と述べる。さらに「PayPay経済圏内の預かり資産が増加すれば、単なる決済会社ではなく、金融会社として認知されるようになる」との展望を示した。
資本再編の最大のメリットは、ユーザーデータの活用にある。栗尾氏は「これまではPayPayユーザーであることは把握できても、詳細な属性は不明だった」と指摘。しかし、資本関係が整理されたことで、PayPayの決済履歴などのデータを活用し、PayPay証券が提案する投資信託を、ユーザーに応じて変えるといったマーケティングが可能になる。
これにより、従来の区分けよりもさらに細かいユーザー分析が行えるようになる。「顧客のリスク許容度や資産の余力に応じた商品提案ができ、よりパーソナライズされたサービス提供が実現できる」と期待を寄せる。
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