キャッシュレス化が進む中、ポイントは単なる「お得」から「経済活動の一部」へと変貌を遂げている。本連載では、クレジットカード、QR決済、電子マネーを中心としたポイントプログラムの最新動向を追い、企業の戦略やユーザーへの影響などを分析する。
「お父さん、早くしてよ!」。駅の改札で子供に声をかけられた。家族で行楽に向かう最中、電車に乗るにあたり日本の交通系ICカードの王者Suicaではなく、クレジットカードのタッチ決済で電車に乗ろうと試みたのだ。
Suicaは、プラスチックカードやスマホに設定したモバイルSuicaを改札にタッチすれば、「ピッ」という音とともにゲートが開き、一瞬で改札を通ることができるおなじみの仕組み。いわゆる交通系ICカードだ。
後発のクレジットカードのタッチ決済での乗車も、ユーザーの体験は一見同じ。Suicaとはかざす場所が違うものの、カードやスマホをかざせば「ピロリン」という音とともにゲートが開く。
ただ、これがSuicaと全く同じ体験かというと、実はそうでもない。冒頭で、子供に急かされたのは、タッチ決済ならではの使いにくさがあるからだ。最大のネックはスピードにある。Suicaが約0.2秒という速さの反応であるのに対し、タッチ決済の乗車は約0.25〜0.35秒。スペックだけ見ると大差ないように感じるが、いざ使ってみると、意外なストレスになる場合がある。
「ピッ」「ピッ」とリズムよく人が改札を通過していく間に、一人だけタッチ決済乗車が交じると、1テンポ開けて「ピロリン♪」となる。後ろの列は全員が一時停止を余儀なくされる。リズムを崩すことこの上ない。
スマートフォンでのタッチ決済にも課題がある。タッチ決済乗車のシステムを取り扱う三井住友カードによれば、「プラスチックカードよりもスマートフォンの方が認証速度が速い」という。しかし、それは機種やOSによっても異なる。iPhoneなら、Suicaと同じようにエクスプレスカードとして設定しておけば、スマホをロック状態のまま改札にかざすだけでOKだ。
一方、Androidはやっかいだ。仕組みとしては決済ごとに優先するカードを設定でき、エクスプレスカード的に使える。しかし、タッチするとエラーが出て、ウォレットからカードを選択してタッチし直さないとうまくいかない場合がある。筆者が利用しているPixel 9ではどうにもうまくいったことがない。
ターミナル駅などでは、入場と出場が同じ改札になっていることが課題となる。特に混雑時には、入場しようとする人が、途切れることなく続く出場者の列を待つ場面が多い。現在、タッチ決済対応の改札は幅広で、乗降どちらにも対応できるタイプが多いが、その分、混雑時にはなかなか入場できない状況が発生しやすい。
正直、都内で日常的に通勤通学をするユーザーにとっては、タッチ決済乗車よりもSuicaのほうが圧倒的に便利だ。処理速度の違いは、通勤ラッシュ時には無視できない差となる。
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