人手不足や大企業と比較して大幅に低い労働生産性、低い利益率……など、中小企業を取り巻く状況はさらに悪化している。
苦しい状況が続く中ではあるが、日本では中小企業の成長が急務となっている。日本企業のほとんどを占める中小企業の成長なしでは、国内の経済全体の成長も望めない。経済産業省は、中小企業の「売上高100億円」化を目指し、支援するプロジェクト「100億宣言」を開始。補助金制度の拡充に取り組むなど、国も力を入れている。
5月13日、船井総合研究所と神戸大学大学院経営学研究科が共同で開催した「100億企業化研究公開シンポジウム2025」で、100億企業化を実現できた企業に共通する3つのパターンについて解説した。
中小企業を取り巻く状況は、大企業と比較してあまりに厳しい。人口減少による国内需要伸び悩み、生産年齢人口の減少、低い労働生産性、人件費の高騰……。特に営業利益については、平均で大企業が34.3%に対し中小企業は8.3%と、大きな差がある(中小企業庁「中小企業白書・小規模企業白書」より)。神戸大学大学院の國部克彦教授(経営学研究科長)は「中小企業に入ってくるはずの利益が、大企業に取られているということ。これを克服しない限り、売上高が改善しても苦しい状況は変わらない」と解説する。
國部教授は「価値を創造して利益の幅を出し、その結果として100億企業を目指していくことが望ましい」と続ける。投資家や顧客だけでなく、従業員、サプライヤーなど全てのステークホルダーに対して提供する価値を広げることで、自社にもより大きな価値が還元されるようになるという(※以下画像参照)。
「株主のための会社、ではなく、社会のための会社にしていくべきだ」(國部教授)
「WTP」(支払意志額:顧客が「支払ってもいい」と思える金額)から「WTS」(売却意思額:売り手が「売ってもいい」と思える金額)を引いた差が価値となる。この幅が広がるほど、価値が大きくなる。
國部教授は「この差が最も重要」と強調し、「今の中小企業では、この差がどんどん小さくなっている。この部分を克服しないと、100億企業を目指しても意味がない」と話す。
この差を広げるためのヒントについて、國部教授は「エフェクチュエーションの5原則」を紹介する。
新しいことに挑戦するとき、何らかの失敗は想定される。その際に「許容可能な損失はどこまでか」を事前に決めて、その範囲で挑戦を続けていくことが重要になるという。「できることからやっていけば正解にたどり着く──というのが、エフェクチュエーションの一番のポイント」(國部教授)。失敗を恐れて何もしないことの方が、リスクとなる可能性があるというわけだ。
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