赤本の長い歴史の中で、存続が危ぶまれるような時期もあった。そのひとつが、1979年に始まった共通一次試験(いまの共通テスト)である。
それまでの国公立の入試は、大学ごとに問題を作成しており、赤本も当然「大学別」で販売していた。ところが、突然「共通の試験をやりますよ」と告げられ、編集部に衝撃が走った。「共通のテストを行うので、赤本も一冊で済んでしまうのでは?」という不安があったのだ。
ところがふたを開けてみると、大学側が二次試験を実施した。つまり、「一次試験+二次試験」という構造が定着したことで、会社はなんとか“赤字”を免れたのだ。
それにしても、編集部は制度が変わるたびに「過去問が使えるのか」と状況を見守らなければいけない。その姿は、まるで“受験生”のようである。
そんな赤本も、2024年に20年ぶりのデザイン変更を行った。それまでの表紙は「ちょっと威圧感があるよね」という声が編集部内でも上がっていたそうだ。
「受験=しんどいもの」といった印象があるが、赤本で「その大変さを少しでも和らげたい」という願いを込めて、より親しみを感じられるデザインにできないかと考えた。
先代の赤本は「赤地に黒いゴシック体の大学名」がどーんと掲載されていたが、「強調を弱め、文字を読みやすくし」「中性的なデザインにする」といった方針を掲げて、現在のデザインに変更した。
雑誌の場合、表紙を変えることによって売り上げが伸びるケースがある。例えば、人気アイドルを起用すると、そのファンが購入することもあって、売り上げに大きく影響する。では、赤本の場合はどうだったのか。「20年ぶりの変更」「受験生にとって親しみを感じられる」デザインにしたことで、売り上げが伸びたのか。
「赤本はこれまでも何度かデザインを変更してきましたが、売り上げに大きな影響はありませんでした。というわけで、今回もほぼ横ばいでした。表紙が変わったから購入するのではなく、大学受験の準備のために……という目的買いをする人が多いからではないでしょうか」と語るのは、編集部の中本多恵さん。
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