カレー店は他の飲食業の業態と比べると、逼迫(ひっぱく)しているとは言い難い。ただ、倒産件数が徐々に増えているのは、確かな事実だ。では、その背景には何があるのだろうか。
1つ指摘できるのは、2024年が「カレー戦争」の年だったということだ。
カレー総合研究所は、「牛丼チェーン2024秋カレー戦争が勃発」というセンセーショナルなタイトルでプレスリリースを出した。その中で、「すき家、松屋、吉野家といった大手牛丼チェーンが、2024年の秋に入り次々とカレーの新商品やリニューアル商品を投入し、牛丼ではなく“カレー”で顧客争奪戦を繰り広げている。この現象はまさに『カレー戦争』と呼べる状況だ」と述べている。
例えば、松屋は2024年7月に「チキンカレー」をレギュラーメニュー入りさせている。吉野家も9月から「黒カレー」などを再登場させており、すき家は10月にカレーメニューを全面リニューアルした。
メニューだけでなく、牛丼各社が「カレー業態店舗」に力を入れているのも興味深い。松屋は「マイカリー食堂」を2013年に出店しているが、ここ数年でその数を急速に増やしており、「松屋」や「松のや」ブランドとの複合店舗を拡大している。現在は、専門店と複合店合わせて150店舗ほどを構えている。また、出店を開始したばかりだが、吉野家も2024年に「もう〜とりこ」というカレー専門店の業態を東京・浅草にオープンした。
このように、牛丼チェーン各社が「カレー」を意識的に推し出すようになったのである。言うまでもなく、こうした巨大チェーンによるカレーは、個人経営店のカレーよりも安価で提供できる。材料や輸送においてスケールメリットを十分に生かせるからだ。
さまざまなモノの値段が上がり、消費者の生活防衛意識が高まっていることから、外食産業においても、より安い商品のウケが良いのは言うまでもない。
こうしたチェーン店のカレーに負けてしまう事業者が少なからず出てきたことも、カレー店の「倒産最多」の理由ではないだろうか。もちろん、個人店でも「ここが良い」と思わせるような工夫がある店なら、生き残ることはできるだろう。ただ、その戦いがシビアになっていることは確かだ。
また、こうした「カレー戦争」が2024年秋から本格化したことを踏まえると、2025年により大きな影響が出る可能性が高い。そうした意味でも、個人のカレー店は引き続き厳しい状況にあると言えるだろう。
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