従業員の生成AI利用率90%超のリアル! いちばんやさしい生成AIのはじめかた
【開催期間】2025年7月9日(水)〜8月6日(水)
【視聴】無料
【視聴方法】こちらより事前登録
【概要】ディップでは、小さく生成AI導入を開始。今では全従業員のうち、月間90%超が利用する月もあるほどに浸透、新たに「AIエージェント」事業も立ち上げました。自社の実体験をもとに、“しくじりポイント”も交えながら「生成AIのいちばんやさしいはじめ方」を紹介します。
街頭演説の声、選挙カーの走る音。
街がざわつき始めると、「ああ、もうすぐ選挙か」と感じる方も多いのではないでしょうか。関心の強弱は人それぞれですが、実はこの時期、企業にとっては“少し怖い時期”です。というのも、政治とは関係ない企業アカウントが、ある日突然SNSで炎上する──そんなことが起きやすいタイミングだからです。
きっかけは、ほんの一言や投稿。特にこちらに意図がなくても、社会の空気が過敏になっている時期には、意図しない誤解や反発を招くことがあります。
では、なぜこの時期にそうした“誤爆”が起きやすいのか? そして、どんな備えができるのか? 本稿では、過去の事例をもとに、企業の発信に潜むリスクと備えを整理してみたいと思います。
選挙が近づくと、情報の受け手も「この発言には何か意味があるのでは?」と敏感になります。そんな空気の中で、普段なら流されるような投稿も、反響を呼ぶことがあります。以下はその典型的なケースです。
2025年2月、牛丼チェーン大手「松屋」の公式Xで「河野太郎大臣が来店しました」と写真付きで投稿。すると、「政治色が強すぎる」「応援しているように見える」と批判が相次ぎました。中には「もう松屋には行かない」と不買運動の声まであがります。
このケースはイメージアップにも思える内容でしたが、選挙が近いタイミングで、河野氏に対する一部ユーザーの反発心が企業アカウントへの攻撃に転じた形で、法的問題はなかったもののブランドイメージに影響が及びました。
2023年4月15日、岸田首相が和歌山県での演説中に爆発物を投げ込まれる事件が発生。翌16日、サイボウズの青野慶久社長はXにて「統一教会問題に真摯に向き合っていたら、 テロは起きなかったのではないか」という趣旨の投稿を行いました。投稿は瞬く間に拡散され、「テロを正当化しているように見える」と批判が殺到。青野社長は後日「テロを肯定する意図は全くなかった」と釈明しましたが、企業経営者の発信としての影響は大きく、メディアでも多数取り上げられました。
2024年11月に実施された兵庫県知事選挙で再選した斎藤元彦知事の選挙活動を巡り、候補者陣営を支援したPR会社社長が自らのブログで「戦略的広報」と称して選挙期間中のSNS運用を自賛する記事を公開し、「公職選挙法違反ではないか」と指摘され大炎上する事態が起きました。
公職選挙法では、選挙運動に対する報酬の支払いは原則禁止されています。弁護士や大学教授らは「PR会社がSNSなどインターネット上の選挙運動の企画・立案を担い、その対価として報酬を受け取った」として、斎藤知事とPR会社社長を刑事告発する事態にまで発展しました。
これらの事例から、企業関係者の選挙絡みの発信は中立性や表現内容への厳しい目で見られ、企業の信用リスクにつながりかねないことが分かります。
日本では選挙期間中(公示日〜投票日前日)は、公職選挙法により厳格なルールが定められています。基本的に特定候補への投票呼びかけなど選挙運動は候補者本人や陣営関係者以外には制限があり、企業公式アカウントが特定の候補者を支持・宣伝することは法律上も問題となり得ます。
企業がうっかり候補者に言及すると、第三者による選挙運動と見なされ公選法違反(事前運動や寄付とみなされる行為など)に問われるリスクがあるため注意が必要です。たった一言が誤解を招き、企業ブランドに影を落とすケースもあれば、発信を控えすぎて信頼構築の機会を逃すケースもあります。
では、どのようにバランスをとるか。ポイントは、「発信の意図が誤解される可能性はないか?」と一歩手前で立ち止まる視点と万が一炎上した時に備える準備です。特に選挙前後は、意見が割れるテーマに触れる際、あえて語らないことも立派な判断ですし、語るなら「共感」と「信頼」をベースにすることが求められます。
グローバルPR会社のエデルマンが毎年発表する、「企業」「政府」「NGO」「メディア」の信頼度を測る調査の2024年版では、「企業が社会課題に対して誠実に向き合っているか」が信頼形成の鍵になるとされ、ビジネスリーダーへの期待も高まっています。つまり、リスクを避けるだけでなく、「社会に対してどう向き合っているか」を伝えることが、むしろ信頼を積み上げる道になるということです。
選挙という特別な空気のなかで、企業がどう振る舞うか。その在り方が、発信の一つ一つに宿る信頼につながっていきます。
選挙が近づくと、企業側にそのつもりがなくても、ちょっとした投稿が「政治的」と受け取られるリスクが高まります。そうした状況を踏まえて、実際に備えを進めている企業も少なくありません。ここでは、企業が実務として取り組んでいる具体的な対策をいくつかご紹介します。
広報やマーケティング部門で「この時期ならではの表現リスク」を社内であらためて共有し、投稿前の確認フローを強化している企業があります。
特にXやInstagramなど、スピード感のある運用が求められるSNSでは、どこまでが“安全圏”かの認識をチーム全体でそろえておくことが重要です。
社長や社員によるメッセージ発信、投票を促すキャンペーン、社会課題に関するタイアップなど、選挙のタイミングと重なりそうな内容は、選挙後に実施するよう調整する企業もあります。
誤解を生むリスクがあるなら、あえて“今は出さない”という判断も、むしろ誠実な姿勢として信頼につながるケースがあります。
仮に投稿が注目され、外部からの問い合わせが来た場合に備えて、あらかじめ社内で「想定問答」や対応方針を整理しておく動きも広がっています。
特にCSRや社会的テーマに関わる発信については、広報やマーケ部門だけでなく、法務や経営企画部門と連携しておくと、万が一の際も落ち着いて対応できます。
社会全体が少しだけ敏感になるシーズンがあります。そんななかで企業の発信は、いつも以上に言葉の受け止められ方に気を配る必要があります。
しかし、どんなに注意していても、うっかり地雷を踏んでしまうことはあります。完璧にリスクを避けることよりも、大切なのは「もし失敗してしまったとき、どう立て直せるか」です。
炎上の芽を早めに見つけて手を打つ、誠実に説明する、誤解を正す。そうした一つ一つの対応が、むしろ企業の信頼を積み上げるきっかけになることもあります。発信には勇気がいります。だからこそ、備えることで、安心して伝えることができる。
選挙という“空気が変わる”時期をきっかけに、あらためて「何を、どう伝えるか」、そして「何かあったとき、どう向き合うか」を見直す機会にしてみてもいいのかもしれません。
この記事を読んだ方に AI活用、先進企業の実践知を学ぶ
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