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「聴く力」がないリーダーたち 部下に話が伝わらない原因は?(1/4 ページ)

» 2025年06月27日 07時00分 公開

 こんにちは。グッドパッチでデザインストラテジスト兼ワークショップデザイナーとして活動している田中拓也です。私は仕事上、さまざまな企業の組織課題を目にしますが、突き詰めると悩むポイント(本質)は似ていることが多く、解決の糸口も共通するものになってきます。そこで「組織デザイン」のポイントを解説していくことにしました。今回は「聴く力」について取り上げます。

 この4月から、部署異動や新しい役割、プロジェクトに直面し、未知の領域に一歩を踏み出した方も多いのではないでしょうか。特にマネジメントを初めて経験する方にとって、新しいメンバーとの関係構築は大きな挑戦です。

 私自身、外資系企業で50人のデザインチームを率いることになったことがあります。そのときの私は、大きな意気込みと共に不安を抱えていました。チームメンバーが急増し、新たに関係を築かなければならない状況で、どこから手をつけていいか分からず、「リーダーとしてチームを引っ張っていかなければ」と強く思っていました。

 チームビルディングや、強い組織とは何かと重要性を説くプレゼンテーションを熱心に行ったものの、メンバーの熱量が上がったかというと、意外とそうでもない。何とも手応えのない場で終わってしまった……。そんな苦い経験があります。

kiku 提供:ゲッティイメージズ

なぜ部下に思いが伝わらないのか

 プレゼンの後、「なぜみんなに思いが伝わらないのか?」「私のプレゼンがダメだったのか?」と途方に暮れていた私。しかし、ここでへこんでいるだけでは、新たに組織を作り上げることができないと考え、メンバー全員とインタビューを行うことにしました。インタビューの場では、自分の考えを説くよりも、それぞれのメンバーの思いを聞くことに重きを置きました。

 「熱意は分かったけど、今現場が苦しいのよ」「今、何がダメで、どうなっていくかが知りたいんだよね」「ストーリーが見えない」――話を聞く中で、私が各メンバーの思いや考えを理解していないことを思い知りました。どのようにチームを引っ張っていくのかはもちろん重要ですが、それ以上にメンバーが組織に所属している意味や、組織体験の設計が構築できていないことを知りました。

 これは私にとって大きな学びであり、リーダーとして「引っ張る」ことだけが全てではないことを痛感した出来事でした。各メンバーと向き合い、しっかりとコミュニケーションをとらなければならない。そのためにも、リーダーには「聴く力」が必要だと感じた瞬間でもあります。

 昨今、マネジャー研修やコミュニケーションの領域で「聴く力」の重要性を語られる場面は非常に多いです。皆さんも「傾聴」という言葉を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

 傾聴の意味をネットで調べると、「耳を傾けて一心にきくこと。熱心にきくこと」(出典:デジタル大辞泉)とあります。研修では、相手の言うことを一旦否定せず、耳も心も傾けて、相手の話を「聴く」会話の技術、とされることが多いです。

kiku 傾聴(グッドパッチ提供、以下同)

 コミュニケーションというと、話し方やその内容など、「話す」側に意識が向きがちですが、まずは聞く方に集中してみましょう。チームリーダーという立場であれば、なおさらです。

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