ここまでコミュニケーションにおける「傾聴」の大切さについて、お話ししてきましたが、「そうは言っても、何を聞けばいいのか」と思う方もいるでしょう。
先ほど、ビジネスにおけるコミュニケーションでは「背景」「考え」「目的」 の理解が大切だと書きましたが、傾聴においては、この3つの要素をていねいに聞くことが大切です。なぜなら、メンバー間で同じ「事実」を見ているのに、話が噛み合わないということが往々にして起こるためです。
一体どういうことなのか、一例を説明します。目の前に水の入ったコップがあったとしましょう。それを見た3人のリアクションはこうでした。
1人目:「まだ水は半分ありますね!」
2人目:「もう半分しかないのですね」
3人目:「お酒が飲みたいのに、水しかないのですね……」
「水の入ったコップが目の前にある」という事実は同じであるにもかかわらず、解釈や感想が異なっています。
事実は同じでも、各人が置かれている状況や、過去の経験といった「フィルター」を通ることで、認識が変わってくるのです。分かりやすいよう、それぞれが抱く認識をここでは「現実」と呼ぶことにします。多くの人々は、その「現実」を自身の「事実」として捉える傾向があります。
事実:実際にそうであること。変わらない事実。
現実:観察者の主観に基づいて認識される事実だと思われること。観察者の主観で変化する可能性がある。
この例では、具体的な事実であるコップの水が目の前にあるため、認識のズレをコミュニケーションで修正することはたやすいでしょう。しかし、会議などの現実の会話ではそうしたことは少なく、それぞれの頭の中で認識が進んでいくため、修正がとても難しい。だからこそ、各人が持つ「背景」や「目的」といったストーリーを聴く必要があるのです。
人によって「現実」は異なるという意識を持ちながら、事実情報の把握を行い、自分の「現実」と相手の「現実」のズレを共有し、それ自身に好奇心を持ち、共感することが大切です。
「1on1をすれば大丈夫」は間違い 若手の心理的安全性を高める“3つの説明”
「心理的安全性」は自ら高める “あの人”が周囲と軋轢ばかり抱える理由
「心理的安全性」におびえる上司が今すぐ見直すべきコト
企業風土は「会議」に表れる 本音を話せるミーティングをつくるためのルールCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング